2016/02/03

最近のマイナンバー(共通番号)関係新聞報道〜個人情報保護委員会はイラネ!

産經新聞2016年1月1日の1面の「マイナンバー」の記事は、最近のマイナンバー(個人番号)報道の圧巻だ。住基カード発行で消えた2000億円超の巨額な血税、天下り組織である「地方公共団体情報システム機構(Jリス)」、住民票コード(11ケタ)、マイナンバー(12ケタ)と次々と産官学で開発される「IT利権」、それに群がる民間ITコンソーシアム(NTT、NEC、富士通など)の利権の掴み取りの構図について詳細に分析、報道している。読んでない方は、近くの図書館へ行って読んでみたらいいのではないか。「先を越された」東京新聞/中日新聞の記者も、“べた誉め”?。良識派知識人の評価の高い報道姿勢を貫いている東京新聞/中日新聞も、時間をかけた、もっと精緻な取材が求められている。

もう一つの記事は、日経2016年1月25日(月)朝刊「論点争点:メディアと人権・法」欄の「マイナンバー利用拡大/個人情報保護委が点検を」も、重い内容だ。税・社会保障・災害対策に絞り、慎重に定着させようとしたはずのマイナンバー制度が、国民的な議論がないまま際限のないエスカレート利用に動き出していることに警鐘を鳴らしている。この背景には、第三者機関であるはずの「個人情報保護委員会(PPC)」が、全く機能していないことがあるのではないか?との指摘が、その骨子。

わが国の個人情報保護委員(PPC)は、オムニバス(官民双方の問題を扱う)機関としてつくられていない。もっぱら民間機関の特定個人情報(マイナンバー付き個人情報)などの問題を扱う機関として組織されている。このことから、捜査機関や課税庁などの公的機関は「公益上の必要性がある」ことを理由とすれば、国民の特定個人情報(マイナンバー付き個人情報)などに無制限にアクセスできる。PPCは、その必要性があったのかどうかを確かめることすらできない。そうした権限はなく、まったくアンタッチャブルな法制になっているからである。立法は全て行政府のお役人任せの議員がウジョうじょの国会、府省のお役人が自分らに都合のいいように法制を小細工、デザインした結果であろう。しかし、こうした制度設計に大きな問題がある。各界から強い批判もある。毎日新聞2016年2月1日(月)朝刊「オピニオン・メディア:自分の個人情報の使われ方は?」では、PPCの「名ばかり第三者機関」の実情、こうした特定個人情報(マイナンバー付き個人情報)の例外的利用規定の濫用に歯止め策を講じる必要性を説いている。

そもそも「マイナンバー」というネーミングの国民総番号制は、民主党が政権を担当していた当時立ち上げた制度である。この連中が下野し、まったく沈黙している現状では、国のお役人はやりたい放題で、国民のプライバシー権、自己情報コントロール権はますます風前の灯火と化してきている。誰も、こんな負の遺産つくりの先兵役を演じた無責任な政党に投票しようとは思わないのではないか。人生80年の時代に、子供のマイナンバーまで勤務先に出させるような危ない番号実務などに親はうんざりしている。ダダ漏れは必至だ。これに「物申す」しない野党などイラネ。

現状の法制を前提とする限りでは、個人情報保護委員(PPC)は、あえて言えば、民間機関のよる国民の特定個人情報(マイナンバー付き個人情報)管理に目を光らせる役割にこそ僅かな存在意義があるはずだ。言い換えると、個人情報保護委員会(PPC)のようなつくりの第三者機関は、国民からの「苦情の申出」を処理するのが、主要な役割の一つのはずだ。市民が「自分の勤務先の会社に自分と扶養家族の特定個人情報(マイナンバー付き個人情報)を提出したが、総務課の机の上の無造作に放置されている」等々の苦情に申出に警告を発したりするのが、重要な役割といえる。

ところが現実はどうか?PPCは、電話で相談に乗るとのことで「窓口」は設けている(電話03−6441−3452)。しかし、苦情処理手続などはまったく不透明である。電話で相談に乗るのはいいが、その処理手続が明確にされていないと、害者とされた民間機関に「反論の機会」など適正手続が保障されないことになりかねない。諸外国の個人情報保護委員会の例などを参考にして苦情処理手続を明定し、速やかに公表すべきだ。また、年次報告書を作成し、その活動内容を国会に提出するなどして、外部審査を受けなければいけない。

この委員会の活動の現状をみると、「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」の発行とか、内閣府や総務省、財務省などの配下で、マイナンバー推進翼賛機関のような活動しかしていない。まさに「名ばかり第三者機関」で、血税のムダ遣いそのものである。

私たち市民や市民団体は、マイナンバー(私の背番号)も要らないが、「個人情報保護委員会」の活動を“監視”し、どしどしクレームをいう必要がある。まさに、今のような状況では「こんな第三者機関などイラネ」である。                          
PIJ 特定個人情報監視委員会