2023/06/13

「デジタルID」、「デジタル本人確認」とは何かを、もっと勉強しよう!!

リアル(目に見える)空間での取引に加え、目に見えないネット/デジタル空間での取引が急激に増えている。民間取引ばかりではなく、行政のいろんな手続も、ネットでやるのが一般化している。国税の電子申告も、紙の申告を上回る勢いだ。

リアル空間での取引の際の本人確認(ID)には、運転免許証、パスポートなどが広く使われてきた。一方で、ネット/デジタル取引の際の本人確認(ID)には、どういう方式を使うのかが問題になる。アマゾンとかさまざまな民間のネット取引には、「ID+パスワード」方式が使われれている。また、ネットバンキングには、「ワンタイムパスワード」が使われている。

わが国のマイナICカードは、リアル区間+ネット空間の双方で使う狙いのIDカードだ。デジタルIDには、「公開鍵(PKI)」方式が使われている。公開鍵(PKI)を格納するにはICカードが必要ということで、政府は国民全員にマイナICカードを持たせようとしている。

ところが、世の中は、モバイル端末(スマホやタブレット端末)全盛時代である。スマホにデジタルIDを直接格納すれば、マイナICカードは要らない。あえていえば、スマホを持っていない人だけにマイナICカードを配ることでいいわけだ。頭の切り替えがいる。政府は、民間のネット取引の本人確認にも公開鍵(PKI)の格納されたマイナICカードを使わせようと画策している。しかし、余計なお世話である。

事実、欧米諸国では、マイナICカードのようなものを国民全員に配る政策は止めている。国がデジタルIDを交付するやり方を採っていても、スマホに直接でを格納する政策を採っている。

にもかかわらず、わが国では、「新型」のマイナICカードを配る計画をしている。デジタル政府を目指しているのではないか?この政策自体、ガラパゴス化している。血税の無駄遣いそのものだ。

で、あるTV局から求められて、Web配信ツールを使ってインタビューをやった。質問したキャスターは、「イギリスでは2006年に、当時の労働党政権が生体認証式国民背番号ICカードを導入したが、2012年の政権交代で廃止された。これはどういった理由なのか。で、現在は、イギリスではどういう状況なのか?」と聞いてきた。

そこで、答えた。「生体認証式(顔パス式)IDに国民全体が強いアレルギー反応を示した。結果、廃止を唱えた保守党・自由党連立政権が勝利。廃止された。」と説明した。しかし、いまも、イギリスではICカードを導入しようという機運にはない。それは、デジタル化時代を迎えて、IDはスマホに格納するのが世界の常識になってきているからだ。急激にデジタル化する時代、スマホなどモバイル媒体主流の時代に、2012年代のICカード廃止の理由を持ち出して、ガラパゴス化した議論を展開しても仕方がない。モバイルIDアプリの是非を議論っしないといけない。素人相手の昔話だけでは、レベルが疑われる。

社会のDX化は、イギリスでも急激に進んでいる。こうしたなか、「デジタルID/デジタル本人確認」にどのようなモデルを採用するかで意見が一致していない。ただ、モバイル端末全盛時代を迎え、ICカードの採用はありえない。デジタルIDはデジタルウォレットの形で採用するとしても、スマホに格納することになるのではないか、と指摘した。

このキャスターは、「マイナICカード反対」の意思が固いことはわかる。頼もしい存在でもある。ただ、「デジタルID/デジタル本人確認」についての知見が相当乏しい印象を受けた。この辺の知見が怪しいと、まともな番組にはならない。そこで説明しようとしたら、さえぎって、席を立った。「この御仁、ますます他人の話を聞けなくなっているなあ〜」と実感した。番組を作成しているADが引継ぎ話を聞いてもらった。

もはや、物理的なICカードに頼らないデジタルID[モバイルIDアプリ]を選択するのが世界の常識である。ID/身分証明書は、ICカードではなく、スマホに直接格納する時代なのだ。もちろん、その場合でも、PKI(公開鍵)仕様がベストであるはずがない。それなのに、ろくに国民的な議論もせずに、PKI(公開鍵)を格納した新型のマイナICカードを配る政策は、まさに「愚策」だ。血税の無駄遣いだ。

マスメディアは、ガラパゴス化した知見でマイナカードパンデミックを問い、庶民に政府の誤りを説くのも悪いとはいえない。しかし、急いては事を仕損じる。もっとデジタルID、デジタル本人確認はどうするのかの知見も豊かにして、公衆に発信して欲しい。

「公定/準国定のマイナICカード」を全国民に強要し、リアル/ネット取引での本人確認に幅広く使わせる政策は、民主主義国家の香りはしない。こんなことばかりやっていると、この国は国際的な信頼を失う。