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先の衆院選では、多くの政党が「消費税食料品ゼロ」と「給付(還付)つき税額控除」という公約を掲げた。いずれも、ポピュリズム色の強い税制改革案である。
大政翼賛会ともやゆされる超党派の「社会保障国民会議(国民会議)」は、これらの案をまな板に載せて検討を進めている。しかし、その背後で実質的に流れを操っているのは、財務省などの役人である。財務省は、これまで一貫して、消費税のゼロ税率や給付(還付)つき税額控除の導入に反対してきた。
国民会議は、この夏に中間報告をまとめ、公表する。最近は、マスコミが「消費税食料品0%から1%へ」「税額控除は当面見送り」といった方向性を報じ始めている。流れをつくるために、役人が裏で“推し活”をしたのかも知れない。
◆「消費税食料品ゼロ」の意味
「消費税食料品ゼロ」には、非課税とゼロ税率の二つがある。非課税にすると、現在の医療機関や大学のように、仕入税額控除ができなくなる。ゼロ税率(免税/0%課税)にすれば、仕入税額控除が可能になる。
現在、社会保険診療を行う医療機関は、消費税が非課税扱いだ。そのため、1億円の医療機器を買っても、10億円で病院を建て直しても、支払時に負担した消費税(1千万円、1億円)はほとんど仕入控除ができない。診療報酬の引き上げだけでは補えず、廃業に追い込まれるケースも出ている。
このため、食料品を非課税にする政策はとりえないという見方が多い。ではゼロ税率にするとどうか。仕入税額控除が可能になり、とてつもない多額の還付が発生するため、税収は大きく減る。消費税減税なのだから当然だが、財務省もその点は理解しているはずだ。
一方で、「0%より1%の方が、レジ改修費が少なくて済む」といった話が流れている。しかし、その真偽は怪しい。財務省が本当に恐れているのは、ゼロ税率を食料品に導入すると、その波が医療機関や大学など現在非課税の分野に広がることだろう。 財務省の本音は、ゼロ税率は輸出だけに限定し、国内取引には絶対に広げたくない、という点にある。消費税食料品1%にして、国内ゼロ税率の永久の封印を狙っているのではないか?
◆給付(還付)つき税額控除は日本にも、この時代にも合わない
給付(還付)つき税額控除は、税と社会保障を一体化する構想だ。しかし、財務省にとっては、厚労省の事務と一体化すること自体が「悪夢」だと考えても不思議ではない。確かに、働いても生活が苦しい人(ワーキングプア)への給付としては意味があった。だが、生成AIやフィジカルAI/ロボットの普及で、働きたくても仕事がない時代が来る可能性がある。そうなると、働く人だけを対象にした給付(還付)つき税額控除は、すぐに時代遅れになる。
それでも、国民民主党のように「給付(還付)つき税額控除」を万能薬のようにPRする姿勢には疑問が残る。しかも、この党は最近になって、結局は「限定的な直接給付しかない」と悟ったように見える。この変節ぶりも問われてよい。
この制度は、本来、全員が確定申告をする国で成り立つ仕組みだ。しかし日本では、ほとんどの給与所得者は年末調整で完結し、確定申告は不要である。では、年末調整を廃止して全員に確定申告を義務づけるのか。それでは、「税制は“簡素”であるべき」とする租税原則に反する。しかも、受給希望者は、わずかな給付(還付)を得るために、所得を正確に示すため煩雑な確定申告を強いられる。結果として、制度は働いても生活が苦しい人たちにとり重い負担となる。申告が不正確であれば、税務調査の対象にもなりかねない。働いても生活が苦しい人たちへの申告支援制度を整えないと過誤申告の温床になる。日本の税理士制度は無償独占である。このため、大量の臨時税理士(臨税)を動員せざるを得なくなるだろう。多くの国では税務専門職は有償独占か名称独占だ。大量の市民ボランティアが低所得者への申告支援を担っている。
こうして見ると、そもそも日本には給付(還付)つき税額控除はなじまない。確定申告不要の直接給付/最低所得保障(UBI/ベーシックインカム)の方が適している。ただし、UBIでも、給付事務を自治体に丸投げすれば膨大な事務量になる。それでも、働いても生活が苦しい人たちに還付申告を義務づけるよりは、はるかにましである。
政党や政治家は、給付(還付)つき税額控除では、“給付”を受けるには確定申告が不可欠だという基本をまず理解すべきだ。しかも、この制度は複雑で、働いても生活が苦しい人たちが誰でも容易に手続きできると考えるのは甘い。費用対効果(コスパ)を無視した「言うだけ番長」の主張は、もうやめるべきだ。“木を見て森を見ない”稚拙な議論は、当の働いても生活が苦しい人たちにとって有害でしかない。
こう書くと「財務省の手先か?」と疑われるかもしれない。しかし、そうではない。「税制と社会保障」は分けておいた方が、セーフティネットとして安心・安全だ。また、税制は「簡素」であることも重要だ。コンプライアンスコストや徴収・還付コストを考えると、給付(還付)つき税額控除はコスパが悪すぎる。
◆ポピュリズム税革論に騙されない!
結局、「税額控除当面見送り」「消費税食料品0%から1%へ」という流れは、財務省の筋書きどおりと言える。そして、ポピュリズム税革論に乗せられ、票の“食い逃げ”を赦してきた私たち有権者自身も反省が必要だ。「給付(還付)つき税額控除が世を救う!」、「手取りを増やす!」のような、政党・政治家の「口当たりのよいキャッチコピーに私は騙されない」覚悟が要る。
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先の衆院選では、多くの政党が「消費税食料品ゼロ」と「給付(還付)つき税額控除」という公約を掲げた。いずれも、ポピュリズム色の強い税制改革案である。
大政翼賛会ともやゆされる超党派の「社会保障国民会議(国民会議)」は、これらの案をまな板に載せて検討を進めている。しかし、その背後で実質的に流れを操っているのは、財務省などの役人である。財務省は、これまで一貫して、消費税のゼロ税率や給付(還付)つき税額控除の導入に反対してきた。
国民会議は、この夏に中間報告をまとめ、公表する。最近は、マスコミが「消費税食料品0%から1%へ」「税額控除は当面見送り」といった方向性を報じ始めている。流れをつくるために、役人が裏で“推し活”をしたのかも知れない。
◆「消費税食料品ゼロ」の意味
「消費税食料品ゼロ」には、非課税とゼロ税率の二つがある。非課税にすると、現在の医療機関や大学のように、仕入税額控除ができなくなる。ゼロ税率(免税/0%課税)にすれば、仕入税額控除が可能になる。
現在、社会保険診療を行う医療機関は、消費税が非課税扱いだ。そのため、1億円の医療機器を買っても、10億円で病院を建て直しても、支払時に負担した消費税(1千万円、1億円)はほとんど仕入控除ができない。診療報酬の引き上げだけでは補えず、廃業に追い込まれるケースも出ている。
このため、食料品を非課税にする政策はとりえないという見方が多い。ではゼロ税率にするとどうか。仕入税額控除が可能になり、とてつもない多額の還付が発生するため、税収は大きく減る。消費税減税なのだから当然だが、財務省もその点は理解しているはずだ。
一方で、「0%より1%の方が、レジ改修費が少なくて済む」といった話が流れている。しかし、その真偽は怪しい。財務省が本当に恐れているのは、ゼロ税率を食料品に導入すると、その波が医療機関や大学など現在非課税の分野に広がることだろう。 財務省の本音は、ゼロ税率は輸出だけに限定し、国内取引には絶対に広げたくない、という点にある。消費税食料品1%にして、国内ゼロ税率の永久の封印を狙っているのではないか?
◆給付(還付)つき税額控除は日本にも、この時代にも合わない
給付(還付)つき税額控除は、税と社会保障を一体化する構想だ。しかし、財務省にとっては、厚労省の事務と一体化すること自体が「悪夢」だと考えても不思議ではない。確かに、働いても生活が苦しい人(ワーキングプア)への給付としては意味があった。だが、生成AIやフィジカルAI/ロボットの普及で、働きたくても仕事がない時代が来る可能性がある。そうなると、働く人だけを対象にした給付(還付)つき税額控除は、すぐに時代遅れになる。
それでも、国民民主党のように「給付(還付)つき税額控除」を万能薬のようにPRする姿勢には疑問が残る。しかも、この党は最近になって、結局は「限定的な直接給付しかない」と悟ったように見える。この変節ぶりも問われてよい。
この制度は、本来、全員が確定申告をする国で成り立つ仕組みだ。しかし日本では、ほとんどの給与所得者は年末調整で完結し、確定申告は不要である。では、年末調整を廃止して全員に確定申告を義務づけるのか。それでは、「税制は“簡素”であるべき」とする租税原則に反する。しかも、受給希望者は、わずかな給付(還付)を得るために、所得を正確に示すため煩雑な確定申告を強いられる。結果として、制度は働いても生活が苦しい人たちにとり重い負担となる。申告が不正確であれば、税務調査の対象にもなりかねない。働いても生活が苦しい人たちへの申告支援制度を整えないと過誤申告の温床になる。日本の税理士制度は無償独占である。このため、大量の臨時税理士(臨税)を動員せざるを得なくなるだろう。多くの国では税務専門職は有償独占か名称独占だ。大量の市民ボランティアが低所得者への申告支援を担っている。
こうして見ると、そもそも日本には給付(還付)つき税額控除はなじまない。確定申告不要の直接給付/最低所得保障(UBI/ベーシックインカム)の方が適している。ただし、UBIでも、給付事務を自治体に丸投げすれば膨大な事務量になる。それでも、働いても生活が苦しい人たちに還付申告を義務づけるよりは、はるかにましである。
政党や政治家は、給付(還付)つき税額控除では、“給付”を受けるには確定申告が不可欠だという基本をまず理解すべきだ。しかも、この制度は複雑で、働いても生活が苦しい人たちが誰でも容易に手続きできると考えるのは甘い。費用対効果(コスパ)を無視した「言うだけ番長」の主張は、もうやめるべきだ。“木を見て森を見ない”稚拙な議論は、当の働いても生活が苦しい人たちにとって有害でしかない。
こう書くと「財務省の手先か?」と疑われるかもしれない。しかし、そうではない。「税制と社会保障」は分けておいた方が、セーフティネットとして安心・安全だ。また、税制は「簡素」であることも重要だ。コンプライアンスコストや徴収・還付コストを考えると、給付(還付)つき税額控除はコスパが悪すぎる。
◆ポピュリズム税革論に騙されない!
結局、「税額控除当面見送り」「消費税食料品0%から1%へ」という流れは、財務省の筋書きどおりと言える。そして、ポピュリズム税革論に乗せられ、票の“食い逃げ”を赦してきた私たち有権者自身も反省が必要だ。「給付(還付)つき税額控除が世を救う!」、「手取りを増やす!」のような、政党・政治家の「口当たりのよいキャッチコピーに私は騙されない」覚悟が要る。