2024/04/04

税務相談ロボットの興隆と税理士業務の展望   

2024年4月3日の東海税務法務研究会(東海税法研)では、AI(人工知能)を使った税務相談ロボット(https://www.robon.co.jp/:例えば参考記事として:https://officenomikata.jp/news/15944/)が話題となりました。

「税務相談ロボットと税理士業務」の問題は、多くの税理士の市場からの退場につながりまねません。深刻にとらえる必要があります。4月2日のNHKニュースでは、インボイス制度とデジタル化で税理士の休業・廃業が相次いでいることが報道されました(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240402/k10014410011000.html)。税理士業務のデジタル化/IT化に続き、税理士業務のAI(人工知能)化も身近に迫ってきています。こんなに税理士界に危機が迫るなか、日税連の幹部10人程度、うち3人は夫婦で、2,000万円もの予算を組んでドイツの税理士会とリアル(対面)の交流会をするとか。オンライン/デジタル時代にはまったく似つかわしくない会の浄財の濫費が話題をさらっています。

そこで、今回は、税理士の危機管理意識を高める狙いで、税理士業務のAI化問題についてQ&A形式で、少し点検してみたいと思います。論点は、税務相談ロボットと税務会計IT企業の行方、税理士業務(判断業務)の行方、税務相談ロボットと税理士法など多岐にわたります。ただ、今回は、いくつかに論点を絞って見てみます。

(Q)税理士法に定める「税理士業務」は、「税務代理」、「税務書類の作成」、「税務相談」の3分野です。一方「税理士の業務」は、前記3分野に加え、記帳代行などの業務が加わります。税務のデジタル化/IT化/AI化が急激です。まず、税務会計ソフトウエアIT企業がどう事業展開したらよいのでしょうか?

(A)これまで、多くの税務会計ソフトウエアIT企業(税務会計IT企業)は、「税務書類の作成」のIT化で事業展開してきました。しかし、チャットGPTのような生成AI(人工知能)の出現により、「税務相談」のAI化に対応できるかどうかが、これら税務会計IT企業の存続を左右する時代に入っています。税務相談のAI化とは、税務相談ロボットの事業を展開することを意味します。この種の事業を展開するには、莫大な投資が必要になります。

ビッグ4(世界4大税務・会計・監査企業)は、税務相談のAI化に莫大な投資をしています。わが国の税務会計IT企業の多くは、太刀打ちできないのではないか、と思います。税務会計IT企業には、経営権を放しても、資本を注入し、税務相談AI化の荒波に立ち向かう気概が求められています。

(Q)最近、さきがけのベンチャー企業(リボン社)が開発した「税務相談ロボット(https://www.robon.co.jp/)」が話題をさらっています。この税務相談AIロボットは、的確なアンサーを提供してくれるのでしょうか?

(A)すでに試された税理士もたくさんいると思います。この企業は、日経新聞にも全面広告をアップしてましたので。皆さんの感想は、「まだまだ」、「未熟」、「国税庁のQ&Aのコピーが出てくる」とか、精度は今一つです。評価はあまりよくない感じです。データの蓄積が不十分だとAIは精度があがりません。

ただ、近年のデジタル化/AI化のスピードは、かつての10年が1年のような状況です。数年後にはさまざまな税務相談ロボットが市場に出回り、激烈な競争になるかも知れません。

(Q)税務相談ロボットは著作権上の問題を抱えていると思いますが?

(A)的確なアンサーを提供できないと税務相談ロボットの生存は至難です。しかし、あらゆるデータや情報、学術論文などをインプットして生成AIを使った完成度の高い商用の税務相談ロボットをつくり上げるには、著作権の保護が厳しく問われてくると思います。医療用手術ロボットなどとは、少し違う次元の問題がでてくると思います。

(Q)税務相談ロボットは、税理士法で規制対象となる「税理士等でない者」(非税理士)にあてはまるのでしょうか?

(A)4月1日から税理士等でない者(非税理士)に対する税務相談停止命令制度(税理士法第54条の2 /税理士等でない者が税務相談を行つた場合の命令等)が施行されました。その骨子は、次のとおりです。

 1. 税理士等でない者が、有償か無償かを問わず、2.「税務相談」を行った場合で、3.「更に反復して」行われ、4. 不正に国税や地方税の賦課・徴収を免れさせ、又は不正還付をさせることにより、納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するため、5. 財務大臣が、緊急に措置を取る必要があると認めるときは、6. 国税庁長官が、5のための調査する必要性があると認めるときは、相談を行った者への報告徴収、または国税庁・税務署職員による質問・検査の実施し、7.「財務大臣は停止等必要な措置を命じることができる。

世界各国には、ロボットに人格を認めようという動きがあります。しかし、現時点で、わが国には、ロボットに人格を認め、ロボット税を課すとか、ロボットの行った知的作業に刑事責任を問うとか、不法行為責任を問うとかの議論は熟していません。加えて、税務相談ロボットの使用者責任とか、製造物責任とかの課題も深掘りされていません。

諸外国では「タックスシェルター規制」をしています。つまり、租税回避スキームなどを考案し、販売するビジネスに政府規制をかけています。仮に、税務相談ロボットが、4. 不正に国税や地方税の賦課・徴収を免れさせ、又は不正還付をさせることにより、納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼす事態が生じた場合には、どのような政府規制をかけるのかが問題になるかもしれません。税理士法は、士業を規制する、いわゆる「業法」です。そもそも、税理士法で、タックスシェルター規制をするのは、お門違いです。

(Q)AI活用の高度な税務相談ロボットの出現で、税理士は生き残れるのでしょうか?

(A)現在の税理士界は、IT化/デジタル化に遅れ、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」のような雰囲気です。しかし、税理士も、課税庁も、納税者も、AI活用の税務相談ロボットを使うようになれば、税法の適用・解釈の画一化は格段に進むのではないか、と思います。生き残りが至難という意味では、税理士だけでなく、他の仕業も同じではないかと思います。

日税連自体が、独自の税務相談ロボットを開発して会員の便宜を図るという選択も考えられます。しかし、幹部が、オンラインで済むものを、リアル(対面)の社交にして、会員の多額の浄財を浪費している現状では、前途多難です。「自戒自浄」「会員ファースト」のスタンスが求められています。

2024/02/09

問われる消防救急へのマイナ保険証活用プラン 〜新たなマイナ保険証パンデミック拡散プラン

≪震災被災者の避難所を自動改札で監視する愚策≫

総務省消防庁主導の消防救急へのマイナ保険証活用プランが浮上している。消防の救急搬送(119番)では、現在、傷病者(患者)の情報は、救急隊員らが、口頭で聴き取っている。

そこで、救急隊員らが本人の同意を得て、マイナ保険証をICカードリーダーで読み取り、タブレット端末でオンライン健康保険資格確認等システムにアクセスし、システムに格納された医療情報/データ【薬剤情報・診療情報・特定検診情報(ほかに透析・医療機関名)】を閲覧して、搬送先医療機関を選定し、救急搬送する仕組み作ろうということで計画が進んでいる。マイナICカード携行の実質義務化推進が狙い。

消防庁のプランによると、今回の試験運用では、全国722消防本部から47を選び、計500隊で、今(24)年5月ころから順次実施する計画のようだ。

https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-118/01/shiryou1.pdf

2024/02/08

石川能登大震災でJR東日本のSuica/スイカ配布の怪! “ショックドクトリン”で、Suicaカードの隠れたマイナカード化?

JR東日本のSuica/スイカ部門にいた御仁がスカウトされ、23年4月にマイナカード発行元のJ-LIS(地方公共団体情報システム機構のトップ(理事長)に就いた。これは、総務省が、公的デジタル個人認証ツールである官製の共通デジタルID/デジタルマイナンバーの民間利用拡大を狙ってのことだろう。

この人事の背景には、「民間のデジタルID/個人認証制度は要らない。わが国のデジタル経済社会は官製の共通デジタルID(JPKI)/デジタルマイナンバーで徹底的に一元監視する!!」といった役人の妄想がうごめく。

早速、この「JR東日本からJ-LISへの天上がり」人事の“負の効果”が露呈した。

今般の石川能登大震災で、石川県は、避難生活を続ける住民に対し、2月7日からJR東日本の交通系ICカード「Suica/スイカ」の配布をはじめたのだ。カードには名前や住所、避難先といった情報がひも付けられ、住民が避難所にあるカードリーダーにタッチすると、いつ誰が来たのかを県や自治体が確認できる仕組み。まさに、通行手形を常時携行しないと、現代版関所を通過できないデータ監視システムだ。

県としては、このシステムの活用で被災者の現状把握をしたいという。今回の取組みは、デジタル庁などとの連携で、県は、各地の避難所でICカードの配布とカードリーダーの設置を進めていくそうだ。

被災地での盗難防止で監視カメラ網を構築、そして今度は、カードリーダーの設置。住民のデータ監視大好きの国と県の役人が、「ショックドクトリン」でタイアップ?災害時だから、面倒なパブコメや聴聞などの手続は要らない、の姿勢。だが、「災害時には人権ゼロもゆるされる??」は誤りだ。被災者の尊厳と平等を守るために、災害対応の際にも人権ファーストでないといけない。被災者が集う避難所に自動改札を設置する発想には恐れ入る。それに避難所は囲いのあるプロレスのリンクではない。

石川県能登の被災地では「マイナカードパンデミック」ならぬ「Suica/スイカカードパンデミック」が起きようとしている。“Suica/スイカカードの隠れたマイナカード化”は脱法行為ではないか?

マイナカードとスイカカードの融合、官民連携で、被災住民のプライバシーの丸ごと監視システムは、まさに人権「反故」システムだ。

被災者向けのこのシステムは、顔パス式マイナ保険証(オンライン健康保険資格確認システム/Mシステム)導入による位置確認・電子データ収容所列島化策の「被災者向けSuica/スイカバージョン」(Sシステム)ともいえる。

そもそもこんな監視(S)システムは、長期停電などが伴う災害時にはうまく機能しないのではないか。被災者をモルモットにしたデジタルビッグブラザー(デジタル監視国家)つくり、血税無駄使いの実証実験は止めにして欲しい。「S」も「M」も要らない。

「ショックドクトリン」、つまり、役人は“ドサクサ時は何でもできる”の姿勢では困る。そんな姿勢では、火事場ドロ、被災地ドロとあまり変わらない。カオス大好きのプロレスでも一応のルールがあるではないか?人間ファーストを精神を忘れてはならない。血税は、仮設住宅の建設など被災者の生活支援に使わないといけない。

いずれにしろ、官製の身分証明書を発行する諸国では、もはやICカードは使っていない。直接スマホに格納する方式になっている。

“敵に塩を送る”わけではないが、マイナICカードの交付はやめにして、スマホに直接格納する方式にしてはどうか?いまや住民は、災害時にも、スマホは持っていれば、必ず身に着けて避難するはずだ。いまだ時代遅れの官製のICカードを発行し続けているから、こうなる。

「政府は住民にマイナICカードを常時携行させるさらなる工夫がいる!」とか??こんな青二才の大学の先生の怪しげなコメントは有害である。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240207/k10014351021000.html

2024/01/31

コンビニでの住民票の紙交付でデジタル化?のフェイク

名古屋市の河村たかし市長は、1月22日、マイナバーICカード(マイナICカード)を使った紙の住民票のコンビニ交付サービスを導入するとアナウンスした。

市民が、コンビニにマイナカードを持参して、紙の住民票の交付を受ける。これが、国が進めるデジタル化の一環? 冗談ではないか? フェイクではないか?

そもそも、「電子政府/電子自治体サービスには、『官製ICカードを使わない』のが世界の流れ!」である。アメリカ、カナダ、オーストラリア、EU諸国などでは、もはや官製ICカードは使っていない。今や「市民は、電子政府/電子自治体サービスは、“スマホ”でやり取りするのが世界の常識だ!」からだ。ICカードは、スマホには不都合だ。クレカ(クレジットカード)もスマホに直接格納/装備する時代だ。

ところが、わが国の電子政府/電子自治体モデルは、「パソコン(PC)+官製ICカード+ICカードリーダー」の3点セット。このモデルは、時代遅れ、ガラパゴス化している。

名古屋市は本気で電子自治体を目指すつもりなら、住民票のコンビニ交付サービスのような血税無駄遣い、国の邪道なデジタル化に加担してはいけない。市民がスマホで市役所のポータルサイト/デジタルプラットフォームに直接アクセスし、市が住民票の提出先に直接電子住民票データを送る仕組みにしないといけない。

名古屋市はこれまで政令市で唯一、住民票のコンビニ交付サービスを導入していなかった。頼もしいと思っていたのだが。総務省の軍門に降ったの感が否めない。

河村市長は、政策変更(転向)の動機として、1月22日から全国の一部コンビニで、マイナンバーカードの機能を搭載したスマートフォン(スマホ)で住民票交付が可能になったことをあげた。河村市長は「カードを持ち歩かなくてもよくなり、巨大な一歩」と持ち上げ、住民票のコンビニ交付サービスの導入を決めたとしている。ただ、早くて2026年度中の導入になるとのことだ。24年2月の市議会に関連予算案を提出するとのことだ。

転向の背景には、市民からはコンビニ交付を可能にすべきだとの苦情が相次いでいたことがあるようだ。こうした苦情は、市議会の自民など総務省喜ばせ組によるグループ活動の結果なのかどうかは定かではない。

いずれにしろ、市民に「電子政府/電子自治体サービスには、『官製ICカードを使わない』のが世界の流れ!」と説明しても、ほとんど理解されない。市民も“横並び自治体大好き”。とりわけ、住民票発行のような分野では、大本営発表(総務省)を信じて疑わない市民が多い。先の侵略戦争が、止まらない、止められないエビ戦(煎餅)のようになってしまったのもフェイクを信じてしまった皇民にも原因があったのだが・・・。

マイナ保険証、事業者登録番号を使った消費税のインボイス制度等々・・・。国の役人がデザインした監視社会化/ビッグブラザー化プランは検挙にいとまがない。政治家も、もはや監視の対象外/治外法権ではありえない。自分らがビッグブラザーの監視対象にされないで使えるカネの確保に必死のありさまだ。政権政党所属の国会議員が、久しく役人社会主義に加担してきた当然の帰結ではないか?

ムシロ旗のマイナ反対市民運動も、政界に独自の橋頭保を確保する力量がないのは明らかで、もはや勝負にならない。

スマホネ―ティブ【スマホで育ってきた世代】が主役になる時代は間近だ。いずれスマホのよる電子住民票交付サービスに移行せざるを得まい。“マイナICカードを使った住民票のコンビニ交付サービス”が時代遅れ/ガラパゴス化するのにはそれほど時間がかかるまい。

市民を食い物にしたIT企業と国の役人が結託した血税浪費のデジタル化プランが止まらない。データ監視で常時人権侵害は当り前の政策では、市民を幸せにできない。

政治は、カナダにならって、「マイナンバー制度が、国民総背番号制度にならないように法的規制をかける!」姿勢を明確にしないといけない。でないと、この国は、データ監視は当り前、中国型の権威主義国家に変容するのを防げない。

2024/01/22

デジタル化に遅れた共通番号(マイナンバー)制度反対運動再興の課題

庶民のカネや財産は共通番号(マイナンバー)制度で監視するのが当り前。一方で、政治のカネや財産の番号管理はしない。不透明で、やりたい放題。こんな庶民感覚を欠いた、不公正で無責任な政治の実態が露わになり、国民・納税者はあきれている。

政治家がイヤなものは庶民も嫌なのが分からないのだろうか?役人主導、IT企業と結託した血税浪費のデータ監視国家構想を放任する政治は、民主政治とは相容れない。国民のプライバシーを大事にしない権威主義国家は要らない。

わが国の共通番号(マイナンバー)制度には、次のような大きく3つの狙いがある。

  1. 国家が居住者全員に12ケタの個人番号を振り、現実空間での税・社会保障業務でのリアルID(本人確認)に使うこと。

  2. ネット空間に展開される電子政府/電子自治体(e-Gov/マイナポータル/マイナプラットフォーム)における税・社会保障業務で、“電子番号”ともいえるICチップ(電子証明書の符号)を官製デジタルID(本人確認)に使うこと。

  3. マイナンバーICカード(マイナICカード)、つまり、顔写真つきの国民登録証(公定身分証明書/国内パスポート)の携行を求めること。

デジタル化(DX=デジタルトランスフォーメーション)が急激だ。経済取引はもちろんのこと、国や自治体の税・社会保障業務が、従来の目に見える「現実空間(リアル空間)」から、目に見えない「ネット空間(デジタル空間/オンライン空間)」にまで大きく拡大している。

ところが、共通番号(マイナンバー)制度反対運動は、デジタル(DX)化の大津波に押し流されてしまっている。

共通番号(マイナンバー)制度反対運動のガラパゴス化・陳腐化は残念だ。所詮、デジタル大嫌いな市民によるムシロ旗運動だから仕方ないのかも知れない。

  1. 「官製のデジタルID」の民間分野への汎用/拡大利用の危険性については、ほとんど斬り込めていない。そもそも、「デジタルIDとは何か」がわかっていない。「官製のデジタルIDと民間のデジタルIDの違い」も分かっていない。これではサステナブル(永続的)な運動は至難だ。

  2. 生体認証式マイナICカードの使用のオンライン健康保険資格確認システム(Mシステム/マイナ保険証)」導入による位置確認・電子データ収容所列島化問題についても同じだ。市町村の救急業務にマイナICカード/マイナ保険証を使うプランも浮上している。こうしたプランは、民営化が進む救急業務、医師の守秘義務、刑法の秘密漏示罪(134条)などの視点からも大問題である。

街頭の監視カメラは問題にするが、もっと危ないMシステムに対してはほぼ無頓着である。“木を見て森を見ず”の感は否めない。

わが国の電子政府/マイナポータルでは、公開鍵(PKI)式電子証明書搭載のICカード(マイナICカード) を使う。だが、グローバルにみてもICカードを使う電子政府モデル(政府ポータルサイト)は、すでに時代遅れだ。ガラパゴス化(ガラ系化)している。なぜならば、このモデルでは、ICカード(マイナICカード) を取得しないと、国民は電子政府(政府ポータル)サイトにログイン(リモートアクセス)できないからだ。 

いまやスマートフォン(スマホ)やダブレットなどモバイル端末全盛の時代だ。モバイル端末には、ICカードやICカードリーダーは不向きである。

仮に公開鍵(PKI)式の本人認証のためのICチップを使ったデジタルIDの採用を継続するにしても、ICカード搭載ではなく、スマホに直接搭載するのが世界の流れである。

加えて、ICチップ(電子証明書)の有効期限が5年で、その都度ICカードを更新しないといけないのも、血税の無駄遣いだ。利便性もよくない。官製のデジタルID/マイナICカードの発行は止めないといけない。スマホに直接搭載し、スマホを持たない人には紙の通知カードをプッシュ型で交付することで十分なわけだ。大胆な発想の転換がいる。

わが国の個人(所得税)の電子申告(e-Tax)では、国税庁のポータルサイト(ウエブサイト)にログインする際に、デジタル ID として、PKI(公開鍵・電子証明書)式に代えて、ID・パスワード式の選択ができる。ということは、データセキュリティ評価の面では、PKI(公開鍵・電子証明書)式も、ID・パスワード式も変わらないということだ。

ところが、政府は、官製のデジタルID(PKI)を、税や社会保障のみならず、民間取引にまで自発的利用を広げようとしている。権威主義国家的な政策で解せない。市場主義を核とした民主制国家には似合わない。

アメリカなどのように、民間活力ファーストで、市場で磨かれた簡素なデータセキュリティのしっかりしたID・パスワード方式の民間のデジタルIDの活用に舵を切るべきだ。

また、人権ファーストの視点から、カナダのように、共通番号が税・社会保障分野以外に不要に拡大しないように法的歯止め策を講じないといけない。

国民・納税者は、共通番号(マイナンバー)制度を濫用したデジタルビッグブラザー(デジタル監視国家)を望んでいない。

共通番号(マイナンバー)制度反対運動は、デジタル(DX)化の大津波に耐えられるように、リスキリング(学び直し)が要るのではないか?

2023/11/18

PIJは、権威主義、国粋主義・復古主義とは組しない!

都内六本木にあるサントリーホールに出かけた。来日したウイーンフィルのコンサートを聴くためだ。公演は、サン・サーンスのピアノ協奏曲第2番とブラームスの交響曲第1番であった。コロナ禍終息後のリラックスしたひと時を満喫することができた。

指揮者は、旧ソビエト出身だが、ウクライナ侵攻に反対し22年3月にロシアでの活動に終止符を打ち、西欧に活動の場を求めた御仁。ピアニストは、中国出身者だが、活動の場を西欧に傾斜させている若手。

自由を謳歌したい音楽家や芸術家、研究者は、権威主義に好意を寄せる人は少ないのではないか?権威主義政体を好まない人たちが日本で公演できている。このことは、裏返せば、日本は、まだまだ自由を謳歌できる政体であるのかも知れない。

最近、国粋主義・復古主義カラーが濃厚な政党が旗揚げした。PIJは、超党派のNGOである。会員はどの政党を支持しようと自由である。誰しも最後のユートピア、デストピアを求めて藻掻く(もがく)人を止めることはできない。

PIJは、権威主義や国粋主義、復古主義などと組することはない。プライバシーファースト、自由と西欧型民主主義ファーストの方針は不変である。

                               PIJ代表  石村耕治

2023/11/12

どう克服する多言語での税務支援とデジタルデバイド

現在、先進各国は、移民を積極的に受け入れ、人口減対策/国内労働者や消費者の拡大に必死である。資質の高い移民の奪い合いである。わが国の人口は、全都道府県で減少、外国人299万人が下支えし、人口減を食い止めている。

アメリカ、カナダ、オーストラリアなどでは、増加する移民の自発的納税協力を仰ぐことが至近の重い課題だ。多言語での税務支援制度の整備、税務支援サービスの拡充に必死である。また、ドイツでは、税理士会が、移民の増加に伴い、国内での自発的納税協力を促進に積極的だ。移民の出身国の税理士会と相互協定を結び「外国人税務専門職の認証」をし、移民の対する母国「語での税務支援サービスの提供態勢を整えてきている。

ところが、わが国はどうだろう?税務専門職団体や納税者団体は、「納税者の権利」を叫ぶお祭り騒ぎは大好きである。しかし、外国出身の納税者へのわが国での多言語税務相談、申告納税サービス、税務コンプライアンスをどうするかへの意識は希薄である。島国根性丸出し、「外来者は、日本語学べ! 日本文化を学べ!」の大合唱。国粋主義に近い発想から解脱(げだつ)できないでいる。

国税庁も、税務行政の国内でのグローバル化には沈黙し、多言語税務サービスのへの認識があまりにも低い。この面で、先進7加国(G7)では、完全に劣等生であろう。

多言語での税務支援制度の整備は待ったなしである。税理士会をはじめとした税務専門職団体は真摯に計画を進めてはどうか?自分らでできないなら、税理士法を改正し、税務相談と税務書類の作成業務を有償独占化すべきだ。そして、外国語でお助けができる市民団体/納税者団体による無償の税務支援の扉を大きく開くべきである。政府規制、税務の無償独占にあぐらをかいていると、この国の申告納税制度自体が、世界の笑いもの、絶滅危惧種になるのではいか?

アメリカの課税庁(IRS/内国歳入庁)は、納税者権利憲章を出し、「納税者が主役」の税務行政を進める旨をアナウンスしている。この納税者権利憲章に沿い、納税者からの苦情に積極的に対応している。IRS内に、納税者からの苦情に対応するために独立した「納税者権利擁護官(Taxpayer Advocate)」という組織を設け、納税者権利擁護官サービス(TAS=Taxpayer Advocate Service)を展開している。TASは、全米に支部を置き、2,200〜300人のスタッフがいる。また、おおよそ170の言語で税務支援できる態勢を整えている。

さらに、TASは、全米の法科大学院やボランティアの協力を得て開設されている低所得納税者相談所(LITC=Low Income Tax Clinic)とのタイアップを強めている。TASは、LITCとコラボし、無償またはほぼ無償の税務相談や税務代理のサービスを多言語で提供している。このほかにも、ボランティア所得税援助(VITA=Volunteer Income Tax Assistance)ブログラム、高齢者向け税務相談(TCE=Tax Counseling for Elderly)プログラムなど、民間ボランティアの参加を得たさまざまな税務支援サービスがある。

わが国はどうだろうか?税務専門職界は「業務は無償独占で、俺たち以外は他人の税務にタッチするのは違法だ。やるならお縄頂戴でやれ!」のスタンスだ。財務・国税当局はどうだろうか?昨年、非税理士等による税務相談停止命令制度をつくった。税務専門職を当局に手なずける策を講じ、暗に税務専門職に当局のお手伝いさんに徹するように求めた、といえる。税理士以外の税務申告を許す「臨税」も消失傾向にある。

国税庁は、納税者からの苦情に対応しようということで、全国の国税局などに「納税者支援調整官」を置いている。アメリカの納税者権利擁護官サービス(TAS)をまねたのかも知れない。だが、スタッフは全国で73人程度。まさに「名ばかり対応」である。

本来、納税者支援調整官への苦情は「多言語」でできるようにすべきだ。だが、国税に、そんな機運はまったくない。税務専門職団体はもちろんのこと、市民団体・納税者団体にも「日本語以外の納税者サービスの必要性」の認識は完全に欠如している。

納税者支援調整官は、財務省組織規則によっている。言いかえると、法律によっているわけでない。また、サービスの内容についても内部の事務運営指針、つまり、いわゆる「秘密通達」で定める。情報公開法を使い開示を求めないと入手できない。納税者支援調整官は、独立性の強い「調整」ができる存在なら、独自のホームページ(HP)を持つべきだ。しかし、「独自のHPなし、ウエブ対応なし。年次報告書なし。」である。まさに、デジタル化の国策に背を向ける「幽霊組織」に近い。

こんな税務行政をゆるしている政治や税務専門職団体のレベルが問われる。民主政体を取る先進各国が採る国際基準からは程遠い。「納税者は権利主体」というのが流れだ。

租税教育??納税者の権利が保障されていないところで租税教育をしたら、納税者の義務一辺倒の教育になるのではないか?そんな租税教育はご免だ。この国は、専制国家、権威主義国家ではないはずだ。

税制のデザインにあたっては、少なくとも「公平(fairness)、簡素(simplicity)、効率(efficiency)」の3原則を尊重しないといけない、とされる。これらの原則のうち、申告納税を基本とする税金について納税者や関与税務専門職の税務コンプライアンス負担(納税協力費)を適正化するには、とりわけ「簡素」がキーポイントになる。

インボイス制度での激変対応などを見ればわかるように、税制「簡素」の理念はすっとんでしまっている。税務専門職ですら追いつけない。政務が多忙で、研修も受けられず、自分の税務すらよくわからなくなる?そんな税理士兼業の財務副大臣も出てくる。彼の言い訳が本当なら、税制・税務行政の簡素化は本当に大事な政治課題であると認識しないといけない。超多忙な副大臣にも税制・税務行政が手に取るように分かるようにするには「財務省・課税庁の文化」を変える必要があるのではないか?

「納税者権利憲章をつくれば、税務行政が納税者本位になる!」 これは、本当かどうかは別として、心地の良いキャッチである。だが、「課税庁の文化を変えない(Changing tax authority’s culture)」と、課税庁は、お客様ファーストのサービスを提供する組織に生まれ変われない。アメリカでも、イギリスでも言われていることである。

わが国の税理士会、税務専門職自身が「課税庁のお手伝いさん」では、「課税庁の文化」を変えられないのではないか?納税者の権利を云々するなら、税理士会が「課税庁の文化」を変えるフロントランナーにならないといけない。心地の良いキャッチで逃げ合うのはもう止めにしよう。

税理士界を含め、幅広い納税者/市民がスクラムを組み、租税行政庁に対して納税者権利憲章を出すように求めなければならない。

かつて、わが国でも政権交代で、一度は納税者権利憲章成立目前にまでこぎつけた。しかし、当時の民主党(旧)幹部の変身、財政当局への迎合で、頓挫した。彼らは政権から降り、自公政権に引き継がせたものは何か?それは、昨今トラブル続きの、データ権威主義国家つくり用ツールである国民総背番号制(マイナンバー制)という“負の遺産”だけだ。

電子政府・電子自治体の流れが日々加速している。行政サービスは、「紙/文書が原則」から、「デジタル(電子)が原則」に180度転換する方向である。こうしたデジタル化の流れは、グローバルなものである。わが国だけが抵抗してもストップできない。

こうした流れもあり、納税者が求める支援の内容は、紙/文書からデジタルに大きく変わってきている。もちろん、デジタル化について行けない人のために、“紙/文書の例外”は、憲法25条の生存権の一環として保障されないといけない。

だが、納税者がデジタル支援を求めているのに、それに対応できない税務専門職が生き長らえるスパンは短いのではないか。税務専門職は、デジタルデバイド(情報技術格差)を権利として主張し、抵抗勢力となるのを自重しないといけない。率先してリスキリング(学び直し)に精進した方がよい。

これは、納税者権利憲章をつくりでも同じだ。「紙/文書が原則」という古典的なドグマを引きずった形で憲章を仕上げても、内容は陳腐化しており、すでに「古典」である。納税者権利憲章をつくるとしても、税務のデジタル化の流れを織り込んだものでないといけない。ゾンビ化した憲章つくっても、国民・納税者にはご利益は限られるからだ。

もうすぐ「デジタルネイティブ」、「スマホネイティブ」の世代が税界にも大量に押し寄せる。税務専門職界は、彼らを迎え入れるためにも「老害の会」であってはならない。「老害の会」を引きずっても、全滅はしないにしても、大半は生き残れないのではないか。

「どう克服する多言語での税務支援とデジタルデバイド!」 この国の避けては通れない重い課題の1つである。

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