2014/04

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2014/04/05

人権侵害ツールとなる顔認証システムの法的統制の課題

「顔認証システム」とは、監視カメラの前を通過する人の顔のデジタル画像から、コンピュータに蓄積した顔面イメージ(画像)データと自動的に照合・識別するシステムである。

街頭の人ごみ、競技場の入場客、コンビニやスーパー、パチンコ店内の客のライブ画像内の「顔」と認識した部分を抽出し、要注意人物の顔面画像が蓄積された顔面画像データベースと照合することで識別をする仕組み。

犯罪者や犯罪嫌疑者の追跡、フーリガン(暴徒)対策、企業での万引防止や顧客データ(購買年代、性別、立ち寄った売場など)の収集など、幅広い用途に使われている。

◆大阪駅ビルでの顔認証実験の延期

総務省が所管する独立行政法人「情報通信研究機構」は、災害時の避難行動を予測するために、同一人物の行動を把握するために、今年4月からJR大阪ビルで顔認証実験計画を実施しようとしていた。

この計画に対して、2014年3月5日に、監視社会を拒否する会(共同代表・伊藤成彦中大名誉教授、田島泰彦上智大教授ほか)は、「JR大阪駅ビルでの顔認証システム実験の中止を求める」声明を出した(http://www006.upp.so-net.ne.jp/kansi-no/)。

声明では、こうした実験を行うことは、この施設を通行・利用する膨大な数の市民一人ひとりの顔面画像を勝手に撮像し、識別・記録するにつながり、1969年に最高裁が「何人も、その承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」とした判決に反し、憲法13条で保障されたプライバシーの権利を侵害すると批判した。

こうした批判を受けて、情報通信研究機構は、2014年3月11日に、顔認証実験を延期した。

◆問われる顧客の顔認証情報の無断共用、使い回し

ソフト開発会社が地域のコンビニやスーパーが連携し、他店で万引した客が自店に来店して再犯を防止することを可能にする「顔認証万引き防止システム」を売り出している。しかし、こうしたシステムの導入に伴う「顧客の顔データの無断共有、使い回し」が問われている。

このシステムでは、店舗に設置された監視カメラの前を通過する人の顔面画像をすべて撮影する。その店舗で、万引の嫌疑を持たれた客やクレームをつけた客の顔面画像をソフト開発・販売会社へ送信、「記録」する。他の店舗では顔面画像にはアクセスできない。

ただ、いったんイエローないしレッドな客と「記録」されると、その客が再びその店舗や、このシステムを導入する他の店舗に来店した場合、監視カメラが検知「ヒット」し、店舗スタッフが知ることができる仕組みだ。

この顔認証万引き防止システムは、監視カメラの前を通過する人の顔面デジタル画像から、コンピュータに蓄積した顔面イメージ(画像)テータと自動的に照合・識別するシステムである。

このシステムを導入する店舗では、店内に「顔認証防犯カメラ設置」といった表示・周知をしたうえで顧客の顔面を撮像しているという。だが、顧客の顔面デジタル画像データを他の店舗(事業者)と共用、使い回ししていることは周知していない。

監視カメラで撮像した顔面デジタル画像データは、個人情報保護法が保護の対象とする個人情報にあたる。防犯目的であれば、本人の同意がなくとも撮像はゆるされる。ただ、撮像した顔面デジタル画像データを、本人の同意なしに無断で第三者へ提供する、使い回しするのはゆるされないと解される。したがって、顧客の「自己情報のコントロール権」をどう保障するかは重い課題である。

コンビニやスーパーなどに設置された監視カメラで自動的に撮像された客の顔面デジタル画像データが本人の同意もなく無断でコンピュータに蓄積され、しかも本人の知らないところでその店舗やチェーン店のみならず、他の小売企業で共用されるのは個人情報保護法違反と解される。

この顔認証万引き防止システムでは、店側が主役で、一方的に「イエローカード」、「レッドカード」を送信・登録できるシステムであり、「冤罪」、「人権侵害」が起きても、顧客は闘えない。「誤認」や悪意の「記録」なども想定されることから、ターゲットとされた顧客に対する反論の機会が保障されなければならない。

PIJ監視カメラ問題対策委員会

2014年4月7日