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PIJ運営委員会
2017年2月28日
2016年12月7日に、「官民データ促進基本法」が、参議院本会議で可決・成立した。この法律は、国・自治体・民間企業が一体となって官民データの利活用を促進するための“プログラム法”である。
2016年11月25日に、与野党(自民・公明・民進・維新)連盟で、議員立法として、衆議院内閣委員会で、発議・法案化され、わずか10日程度、十分な審議を経ずに成立した。
政府は、これまでIT総合戦略本部を中心にオープンデータ施策などを推進し、国・自治体・民間企業が保有するデータの活用を促してきた。しかし、いまだ新事業の創出や経済成長などの目に見える成果には結びついていない。この背景には、マイナンバー法や改正個人情報保護法、サイバーセキュリティ基本法のように、データを保護する施策を優先せざるを得ないことがあるとの認識を示している。
そこで、今回の法律で、国民のプライバシー保護を後退させて、国民データ活用の推進を優先させる基本方針を明らかにしたものである。
遅々として進まないマイナンバー(個人番号)カードの普及・活用の促進、個人情報の産業利益優先、政府による国民監視を強化するための 法律とみてよい。
個人情報を満載したマイナンバー(個人番号)カードなど、紛失したら危ない。まともな感覚の市民なら、こんなもの持ち歩きたくない。こうした市民感覚に配慮せず、全国民の個人情報を公有化するとともに、民間企業が自由に商業利用できるようにするイケイケドンドンの方針をうたった法律である。
また、この法律では、はじめて「AI(人工知能)」、「IoT(インターネット・オブ・シングス)」、「クラウド・コンピューティング・サービス」を定義した。 さらに、国・自治体のデータの活用促進のため、システムの規格統一や互換性の確保などを謳っている。
【この法律の骨子】
(1)この法律の目的(1条)
○インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて流通する多様かつ大量の国・自治体・民間企業が保有する「官民データ」を適正かつ効果的に活用する。
○このための基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、並びに官民データ活用推進基本計画の策定その他施策の基本となる事項を定めること。
○加えて、官民データ活用推進戦略会議を設置することにより、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与すること。
(2)定義
○「人工知能関連技術」(2条2項):「人工的な方法による学習、推論、判断等の知的な機能の実現及び人工的な方法により実現した当該機能の活用に関する技術」をいう。
○「IoT(インターネット・オブ・シングス)活用関連技術」(2条3項):「インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の活用に関する技術であって、当該情報の活用による付加価値の創出によって、事業者の経営の能率及び生産性の向上、新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するもの」をいう。
○「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術」(2条4項):「インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)を他人の情報処理の用に供するサービスに関する技術」をいう。
* * *
この法律に基づいて今後、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)の下に首相を議長とする「官民データ活用推進戦略会議」(戦略会議)を設置し、基本計画の立案や重要施策の実施推進などに取り組むとしている。同会議はすべての国務大臣、政府CIO、有識者からなる。
戦略会議では、必要に応じて既存の法制度の改正も進めていくとしている。議長である首相には、関係行政機関の長に勧告できる権限も付与した。また、都道府県に対しても「官民データ活用推進基本計画」の策定を義務付けたほか、市町村には努力義務を課した。自治体は施策の策定・実施に関して、官民データ活用推進戦略会議に対して情報提供などの協力を求めることができ、会議はその求めに応じるように努めるとした。
基本的な施策としては、行政手続きなどでのオンライン利用の原則化、国・自治体のデータの容易な利用(オープンデータ化)、マイナンバーカードの普及・活用などのほか、国・自治体のデータの活用を促すために、システムの規格整備や互換性確保、業務の見直しなどの措置を講じるとしている。
しかし、こうした野放図でテンコ盛りの内容の政治主導の政策に、国民のコンセンサスが得られているとは思えない。国民のプライバシーを尊重しない政産官学が鉛筆を舐めなめしてまとめた政策は、まさに「絵に描いた餅」、住基ネットのように、血税の浪費、必ず失敗するのではないか。
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PIJ運営委員会
2017年2月28日
2016年12月7日に、「官民データ促進基本法」が、参議院本会議で可決・成立した。この法律は、国・自治体・民間企業が一体となって官民データの利活用を促進するための“プログラム法”である。
2016年11月25日に、与野党(自民・公明・民進・維新)連盟で、議員立法として、衆議院内閣委員会で、発議・法案化され、わずか10日程度、十分な審議を経ずに成立した。
政府は、これまでIT総合戦略本部を中心にオープンデータ施策などを推進し、国・自治体・民間企業が保有するデータの活用を促してきた。しかし、いまだ新事業の創出や経済成長などの目に見える成果には結びついていない。この背景には、マイナンバー法や改正個人情報保護法、サイバーセキュリティ基本法のように、データを保護する施策を優先せざるを得ないことがあるとの認識を示している。
そこで、今回の法律で、国民のプライバシー保護を後退させて、国民データ活用の推進を優先させる基本方針を明らかにしたものである。
遅々として進まないマイナンバー(個人番号)カードの普及・活用の促進、個人情報の産業利益優先、政府による国民監視を強化するための 法律とみてよい。
個人情報を満載したマイナンバー(個人番号)カードなど、紛失したら危ない。まともな感覚の市民なら、こんなもの持ち歩きたくない。こうした市民感覚に配慮せず、全国民の個人情報を公有化するとともに、民間企業が自由に商業利用できるようにするイケイケドンドンの方針をうたった法律である。
また、この法律では、はじめて「AI(人工知能)」、「IoT(インターネット・オブ・シングス)」、「クラウド・コンピューティング・サービス」を定義した。 さらに、国・自治体のデータの活用促進のため、システムの規格統一や互換性の確保などを謳っている。
【この法律の骨子】
(1)この法律の目的(1条)
○インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて流通する多様かつ大量の国・自治体・民間企業が保有する「官民データ」を適正かつ効果的に活用する。
○このための基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、並びに官民データ活用推進基本計画の策定その他施策の基本となる事項を定めること。
○加えて、官民データ活用推進戦略会議を設置することにより、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与すること。
(2)定義
○「人工知能関連技術」(2条2項):「人工的な方法による学習、推論、判断等の知的な機能の実現及び人工的な方法により実現した当該機能の活用に関する技術」をいう。
○「IoT(インターネット・オブ・シングス)活用関連技術」(2条3項):「インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の活用に関する技術であって、当該情報の活用による付加価値の創出によって、事業者の経営の能率及び生産性の向上、新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するもの」をいう。
○「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術」(2条4項):「インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)を他人の情報処理の用に供するサービスに関する技術」をいう。
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この法律に基づいて今後、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)の下に首相を議長とする「官民データ活用推進戦略会議」(戦略会議)を設置し、基本計画の立案や重要施策の実施推進などに取り組むとしている。同会議はすべての国務大臣、政府CIO、有識者からなる。
戦略会議では、必要に応じて既存の法制度の改正も進めていくとしている。議長である首相には、関係行政機関の長に勧告できる権限も付与した。また、都道府県に対しても「官民データ活用推進基本計画」の策定を義務付けたほか、市町村には努力義務を課した。自治体は施策の策定・実施に関して、官民データ活用推進戦略会議に対して情報提供などの協力を求めることができ、会議はその求めに応じるように努めるとした。
基本的な施策としては、行政手続きなどでのオンライン利用の原則化、国・自治体のデータの容易な利用(オープンデータ化)、マイナンバーカードの普及・活用などのほか、国・自治体のデータの活用を促すために、システムの規格整備や互換性確保、業務の見直しなどの措置を講じるとしている。
しかし、こうした野放図でテンコ盛りの内容の政治主導の政策に、国民のコンセンサスが得られているとは思えない。国民のプライバシーを尊重しない政産官学が鉛筆を舐めなめしてまとめた政策は、まさに「絵に描いた餅」、住基ネットのように、血税の浪費、必ず失敗するのではないか。