2024/11
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2024/11/25
米「またトラ政権」で、記入済み申告/デイレクトファイル(DF)/IRS/IRSの納税者権利擁護官はどう対応する??
2024/11/08
トランプショックとアメリカ税務行政の行方
米大統領選は、選挙モンスター、トランプの大勝利だった。この結果には、アメリカのみならず、世界の民主勢力には大きなショックを受けた。リベラルなニューヨーカーのなかには、アメリカ政治に失望し、カナダなど他国へ移住したいという人まで現れている。
大統領選挙の投票日が近づくにつれて、NYタイムズを除き、主要新聞が次々と「沈黙」し出した。今回のハリスの大負け、メディアには、想定の範囲内だったのかも知れない。
衰えを隠せない現大統領の姿は、強いアメリカを求める民衆には、マイナスのインパクトが強すぎた。一方のトランプは、同じくらいの年齢でも、マッチョで、発言も、失言も、力強い。
連邦議会民主党が、衰えの隠せない現大領領に、「バイバイ、バイデン」ができなかったことが一番の敗因ではないか。バイデンが早めに次期大統領職のシートを手放し、ちゃんと予備選をやっていれば、結果は異なっていたのかも知れない。
バイデンのパートナーのハリスは、元検察官で「法の支配」に終始。経済の話になると、無難な答えをするので精一杯。日本では、裏金問題追及だけで票が集まる。だが、アメリカは違う。大領領選では、経済や税財政政策で説得力をもって語れないと、大きな弱点になる。バイデン政権は、イスラエルやウクライナに大量の武器を送った。ところが、制限付きとかで中途半端。死者なしで戦争を終わらせる政策がない。そのかげで「インフレで中産階級の生活は火の車」。民意が、彼女に「ノー」をつきつけた最大の理由の1つであろう。
民意は、トランプがベストとはいえないが、バイデン政策の承継ではなく「チェンジ」を求めたのであろう。民意は、当面「人権より、生活、パン」ファーストを求めたのは確かだ。しかし、いずれ生活者がこの投票行動のつけをは払わされことになるになるかもしれない。自己中のトランプと自己中の投票をした生活者、どちらに勝ち目があるのだろうか。2年後の連邦議会議員の中間選挙の結果を待つしかない。
「有色人種、しかも女性、大統領職、軍の最高司令官職は、任せるわけにはいかない!」の隠された民意が票に現れたのこともあろう。男尊女卑、白人至上主義、キリスト教の良妻賢母のような込み入った流れが圧倒してしまったのかも知れない。とりわけ、中西部の白人、全国の黒人男性には、「黒人の女性が大統領になる」のには、抵抗感が強いようだ。こうした傾向は、世論調査などを見ればわかる。白人のヒラリー・クリントンでもガラスの天井を打ち破ることができなかった。アメリカの有権者は、女性、しかも有色人種、の大統領を受け入れる心構えができていないということだろう。いいかえると、トランプは、2回とも、女性候補に助けられたということだ。男性のバイデンには勝てなかったわけだから。
ということは、本当のところ、男社会の実態は、アメリカも、日本とあまり変わらないのかも知れない。
カマラは頑張った。だが、アメリカの隠された男社会の岩盤を突き崩せなかった。次回の大統領選でも、カマラの再登板は至難であろう。
白人至上主義、有色人種排除の動きが強まり、さらに分断が進むのは必須だ。トランプ政権では、白人優先の閣僚人事が進むのではないか。
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さっそくカリフォルニア州(加州)のギャビン・ニューサム知事が、トランプの政策に反旗!!をあげた。「加州と民主主義を守るために闘う!」がキャッチだ。
トランプは、地球温暖化対策を掲げるパリ協定を脱退し環境保護には後ろ向きの姿勢を貫いている。彼は、選挙戦で、環境保護ファーストのリベラルが支配する加州には、山火事が起きても連邦予算を付けないと揺さぶった。
しかも、ハリスもバイデンも早々と敗北宣言をした。結果、法の支配を散々無視してきた暴れん坊のトランプを無罪放免にした。赦すことは大事である。2人とも、潔しで、お行儀もよい。だが、「ワイルドウエスト」の伝統のある加州のトップとしては、赦す、赦されることで一件落着を急いだ2人に相当ショックを受けたのではないか。いま、ニューサムは「怒りのランボー」常態だろう。
白人そして男性のニューサムが、4年後の民主党の大統領候補の一番手になるのではないか。ニューサムは、最近、加州議会がAI規制法を成立しようとしたのに拒否権を行使した。左派・リベラルのカラーを薄めようと懸命だ。産業界寄りの姿勢も見せて、支持層の拡大に努めている。
ニューサムは、トランプの後釜としては、最適な人材に1人だと思う。ただ、トランプのような選挙モンスターではない。ニューサムは「加州と民主主義を守るために闘う!」ことで、タフガイで、全米に注目され、民意をつかめる選挙モンスターに成長して欲しい。世界の大国アメリカのリーダーとして安心して投票できる大統領候補になって欲しい。
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トランプの再登板で、アメリカ(連邦)の税制や税務行政はどうなるのか。
不動産業界出で減税大好きのトランプ租税政策の大黒柱は、現行の法人税率21%から15%への引下げだ。イーロン・マスクマスク氏が率いるテスラのような大企業は潤うことになる。(余談だが、トランプとマスクは、どちらも唯我独尊、いずれは仲たがいかも知れない。)
トランプは「減税」ファーストの一方で、アメリカの産業/労働者を保護するために「関税」大幅引上げを叫ぶ。ただ、アメリカの生活者は、安価な外国産品で潤ってきた。関税の大幅引上げは輸入品価格が大幅上昇につながる。関税引上げで、確かに国庫には大きな税収が転がりこむ勘定になる。だが、生活者には、実質3〜5%の連邦消費税を導入するに匹敵する増税になるとの試算もある。生活者には大きなマイナス効果が及ぶ。生活者はインフレに苦しむ結果になるはずだ。
バイデンの税務行政政策の基本は、税務調査強化で税収をあげる、というものだ。トランプの返り咲きで、これまでのバイデンの税務調査強化策はストップするはずだ。
アメリカは、スポイルシステム(猟官制)を敷く。選挙だ勝った政党が、政府官職のポストを総取り(政治任用)する仕組みだ。連邦課税庁(IRS/内国歳入庁)のトップは政治任用なので、変わる。IRSの予算は大幅に削減されるだろう。IRSの組織も大きく変わり、ダウンサイズ化が進むだろう。
それに、納税者(とりわけ富裕層)の権利利益は今以上に保護されるはずだ。わが国では、概してリベラルが減税・納税者の権利保護を叫ぶ。ところが、アメリカでは真逆だ。保守が減税・納税者の権利保護を叫ぶ。
いずれにしろ、IRSの無人化、税務のデジタル化で、徴税コストの大胆な削減、IRSの「解体的」な合理化に進むのではないか。
IRSは、2024年15日にはじまる2023課税年分の個人所得税の確定申告から、記入済み申告(pre-filled tax return system)を、ダイレクトファイル(DF)の名称で本格導入する。バイデン政権は、記入済み申告導入で納税者を煩雑な確定申告から救い出せる、という考えだからだ。給与所得や年金所得など、簡潔な確定申告をする納税者は、IRS のウエブサイトにログインし、スマホの画面を見ながらIRSが作成した申告データに同意すれば、ワンクリックで確定申告を終えられるようになる。
これまでの電子申告システム(e-file)では、市販の税務申告ソフトを使う。ところが、新たに導入されたダイレクトファイル(DF)は違う。納税者は確定申告に市販の申告ソフトを使う必要がない。無償、官製/官営のシステムだからだ。民間の税務申告ソフト業界からすると、まさしく、官尊民卑のシステムに映る。
民間ファーストを唱える議会共和党は、民間の税務申告ソフト業界益の擁護に熱心だ。連邦議会共和党が、大統領職に加え、議会上下両院の過半数を制し、“トリプルレッド”になる可能性が極めて濃厚だ。次期トランプ政権下、議会共和党は、無償のダイレクトファイル(DF)のエスカレート利用にストップをかけ、税務申告ソフト業界益を保護に動くのではないか?
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上品ではないトランプの返り咲きは、品位を大事にするアメリカ人には大きなサプライズだ。それに、いまだ人種、ジェンダーの壁はとてつもなく分厚いと感じる。「勝てば官軍、負ければ賊軍」の言葉は、今後アメリカでも広く通用しそうだ。
不動産業界出、唯我独尊のトランプ再登板で「破壊こそ建設なり」の大きなウエーブが起きるのではないか?西欧型民主主義のフロントランナーのアメリカが、権威主義国家、独裁者主導国家に変容することが危惧される。
グローバルに見ても、今後数年は、政治倫理、国際協調よりも、弱肉強食、マネーファーストで経済的強者が威張りちらす、資本主義丸出しの時代が続くのではないか。
・ アメリカでは 「またトラ政権(President Trump, Again」が2025年1月末から始動する。またトラ政権は、大統領選勝利後、即、政府効率化省/DOGE(ドージ/Department of Government Efficiency)を新設する構想を発表した。
・ DOGEは、仮装空間(ネット空間)に設立され、イーロン・マスク&ビベック・ラマスワミら新興企業経営者らが、 ボランティア(無給)で参加・主導する。外部からボランティア参加するのは、政官民間の利益相反を回避するのがねらいだ。DOGEは、またトラ政権が提唱する「連邦税減税政策」に沿い、税収の垂流しにストップをかけるために、「連邦省庁の整理・統合プラン」、「連邦省庁の職員削減プラン/歳出削減プラン」を作成し始めた。
・ アメリカの場合、連邦の歳出は、大きく 1.裁量的経費支出(discretionary expenditure)と、2. 義務的経費支出(mandatory expenditure)に分けられる。
・ DOGEプランに盛られる 1.裁量的経費支出削減については、大統領が、大統領令で行うことができる。
・ 一方、DOGEプランに盛られる社会保障給付などの 2.義務的経費支出削減は、議員立法で対応する。今般の選挙の結果、トリプルレッド (大統領・連邦議会上院・下院が共和党支配)になったことから、2.義務的経費支出削減は比較的スムースに進むのではないか?
・ 連邦政府は、おおよそ200万人の職員を雇用している。連邦財務省(DOF)はおおよそ11万人を雇用している。う ち、課税庁/内国歳入庁(IRS)は、おおよそ9万5,000人(うち正規職員は78,000人程度)【バイデン政権の プランでは、IRSの職員を数年以内に102,500人まで増員の計画。これに対して、またトラ政権は、バイデン政権のIRS職員増員計画には反対の立場。増員計画は破棄されるものと思われる。】
・ したがって、またトラ政権は、バイデン民主党政権の税務執行強化による増税政策を、減税+納税者権利擁護ファースト政策に転換する。アメリカでは、保守が「減税」+「納税者の権利擁護ファースト」を強く打ち出すのが伝統。
・ またトラ政権は、DOGEが、IRS職員の大幅削減をするプランを作成する方向。【IRS業務の州への移管計画は未定。 連邦公正税(所得課税の廃止およびIRSの廃止を盛り込んだ「給付つき連邦一般小売売上税法案」、公正税法案( FTA=Fair Tax Act of 2023)23%の連邦小売売上税の導入および賦課徴収業務の州への移管プラン/14b814a8c7074cc7d5be18174e68fb7c.pdf)の実現は、最終的に連邦憲法修正が伴うため不透明】
・ 一方、またトラ政権は、「連邦教育省(DOE)」を廃止し、業務を州に移管する計画。
・ またトラ税制改革では、「減税」が中核となる。2017年の税制改革(TCJA=Tax Cuts and Jobs Act of 2017)で 実施した個人所得税の減税(2025年までの時限を延長・継続)、TCJAでの法人税率減税(35%の超過累進税率から 21%へのフラット税率)をさらに15%まで引下げる。
・ バイデン政権、連邦議会民主党は、「すべての納税者は、納税申告を無償できる国つくりを目指す」。2024年に記入済み申告である「ダイレクトファイル(DF)」を試行した。そして、2025年1月15日からはじまる2024年度分の個人所得税の確定申告からDFの本格導入に舵を切った。一般的な確定申告(給与所得・年金申告など)は、納税者が望めば、スマホ(移動端末)を使いワンクリックで完了できる仕組みになる。
・ 連邦議会共和党は、連邦議会民主党と対峙する狙いから、税務申告ソフト企業、申告書作成業者や税務専門職の職域護の視点から、ダイレクトファイル(DF)の本格導入に消極的姿勢であった。
・ これに対して、DOGEは、あらゆる不要な政府規制の撤廃が目標。規制撤廃は、法改正よりは、AI化・自動化で実現しようという方向だ。
・ アメリカでは「納税申告支援ロボット/タックス・コンプライアンス・ロボット(tax compliance robots)」や「ロボットAI税/RAI税(Robotics, Artificial Intelligence, and Automation tax)」の導入案も目白押しである。わが国でも、DX化/デジタル化/AI化の激流が税務専門職の職域(税務書類の作成業務+税務相談業務)をじわじわと浸食し始めている。業法改正によるニセ税理士退治のような一時しのぎ(stopgap)策は、政府規制緩和の精神とぶつかるだけでなく、業界の自滅につながることが危惧される。むしろ、政府規制でつくられた税務専門職は“DX化に向けた学び直し”、「どんとこいAI化・自動化!」のガッツ(気概)を持って対応するように求められる。
・税務のDX化/デジタル化/AI化は、納税者には利便性が高い。一方で、税務専門職には職域を奪う負の影響がある。 納税者・納税者団体と税務専門職との間の「分断(divide)」を広げる可能性も高い。ただ、デジタルネ―ティブが税務専門職界の中核を占めるのも時間も問題であろう。「分断」ではなく、「協調」の時代に入るのは、時間も問題ではないか?
・ IRSの納税者権利擁護官は、記入済み申告/「ダイレクトファイル(DF)の本格導入に賛成、積極的姿勢に転換している。理由は、税制の簡素化が遅々として 進まないことがある。むしろ、税制は年々複雑化する一方である。給付つき税額控除(EITC/勤労所得税額控除)のような煩雑の仕組みを 継続するには、AIなどの先端技術を活用して記入済み申告の導入により、納税者に権益を保護する方向を目指すしかない。」との考えを強く打ち出すにいたっている。
・ DOGEを率いるイーロン・マスクは、将来的には、AIやロボテックスが人間労働のほとんどを支える時代がくると発 言している。彼は、デジタル化の進展で、人間はユートピアでレジャーを楽しんで生きられる存在になるとイメージ しているのかも知れない?
・ イーロン・マスクらは、当然、税務申告は、AIやロボテックスが支え、無償サービスとなるとイメージしている。
・ イーロン・マスクやメタのマーク・ザッカーバーグ、マイクロソフトのビル・ゲイツなどは、AI&ロボットなどに課税する仕組み(ロボット税/RAIA税の導入)を想定している。イーロン・マスクは、ロボット税、RAIA税の税収を、国民に配分する「ユニバーサル・ハイ・インカム」を導入する考えを発表している。
・ 「ユニバーサル・ハイ・タックス」とは何か?「ユニバーサル・ベーシック・インカム (国民全員に一定額の所得を配付する制度)」、あるいは「負の所得税」とはどう違うのかは、不透明?
・ イーロン・マスクらが率いる新設されたDOGEは、DOGEがダイレクトファイル(DF)のエスカレートによる納税者 の確定申告無償化の徹底を掲げるのではないか、との報道を受けて、アメリカで代表的な税務申告ソフト作成・販売業者であるH&Rブロック社とインテュイット社の株価は下落した。
・ 老いが目立ち、よぼよぼで不人気のバイデン、男尊女卑に風土で勝てなかったカマラ・ハリスが残した「またトラ政 権」誕生の世界に及ぼす影響ははかり知れない。
・ 曲がりなりにも、アメリカは「議会制民主主義」を国是としている。連邦議会民主党は、2年後の連邦議会議員選挙 に向けて、一般の生活者をもっと寄り添う政党への生まれ変わりを急いで欲しい。