2026/02

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2026/02/23

米連邦最高裁は「トランプ関税」にノー、わが国の民意は「政党乱立」にノー

先の衆院選では、民意が政党乱立に明確なストップをかけた。一方、アメリカでは2026年2月20日、連邦最高裁が「トランプ関税」にノーを突き付けた。国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて課した相殺関税を「違法」とした「 Learning Resources, Inc. v. Trump 事件」判決である。

関税男(tariff man)の暴走にブレーキをかけたこの判決は、世界から歓迎されている。

この判決は、司法が「混乱と力による世界貿易支配はアメリカの利益にならない」と断じたものと読める。伝統的な三権分立を重視し、関税をかけるのは議会の権限であり、大統領令で関税を課すのは、権限踰越(ultra vires)で「違法(illegal)」であると断じた。【ちなみに、判決は「違憲(unconstitutional)」とは言っていない。】

連邦憲法は、「租税法律主義」を規定している(1条8節1項)。つまり、議会が法律で租税や関税などを課すルールを定めている。大統領令で課せるとは書いていない。これは予測可能性や法的安定性を確保することが目的のためだ。トランプ流のポピュリズム的租税政策は、大統領令で日々上書きされ、先行きが不透明である。明らかに予測可能性や法的安定性を失している。

この判決で、連邦最高裁は、大統領令による議会の課税権限の無秩序な介入に歯止めをかけた。同時に、大統領への権限集中が連邦議会の機能不全を招いていることへの警鐘とも受け取れる。 今回の判決は、トランプ流政治手法への戒めのメッセージといえる。

連邦最高裁は、唯我独尊的な統治スタイルや「破壊的創造(disruption)」を繰り返すトランプ政治に対し、鎮静化の役割を果たそうとしているのかもしれない。

現在の連邦最高裁は、保守派6人・リベラル派3人で構成されている。今回のIEEPA関税事件違法判決は6対3で決せられた。つまりリベラル派3人と保守派3人によって形成された。

保守派判事の意見書には示唆がある。自分を選考したのはトランプ大統領であっても、特定の個人の意向に沿って判断すべきではないという姿勢だ。むしろ、国民が選んだ代表の判断こそ尊重されるべきだと強調している。強いリーダーへの権限集中に対する警鐘でもある。

意見書を書いた判事の中には、トランプ大統領が名指しで批判した超エリート大学の出身者もいる。彼らは、ポピュリズム的分断をあおるいまの政治手法に強い疑問を抱いているはずである。アメリカの議会制民主主義の行方を深く憂慮しているのではないか。国家の品格を保つためにも、座視できないと感じているはずだ。今の流れを変えたいという思いがあるはずだ。

とはいえ、保守派判事が多数を占める最高裁が、政権交代に過度な期待を寄せているようには見えない。むしろ、自ら司法として、荒っぽいトランプ政治で傷ついた民主主義を立て直す責任を感じているのではないか。最高裁判事は終身任用である。この立場を背景に、今後も正義につながる司法判断を積み重ねていくことが期待される。

翻って、わが国でもアメリカと似た政治の動きがある。 新党が生まれては消える状況は、まるで日持ちのしない流行歌のようである。

ニューメディア主導の票欲しさのポピュリズム政治や、ポピュリズム減税論議、非現実的な反移民プロパガンダなどに、多くの国民は疲弊している。

先の衆院選では、こうした議会制民主主義を疲弊させる動きを止めたいという大きな流れが生まれた。「毒には毒をもって制す」。右寄りの自民一強、いわば“ビッグ自民”を成立させ、右ならえの少数政党乱立に終止符を打ちたいという民意が働いたように思える。

参政、保守、国民民主のように“一国一城の主”を思わせるポピュリストは、勢いがあっても民意が変われば失速しやすい。戦国時代に活躍した武将で、庶民を本当に幸せにできたつわものがいたとは聞かない。

集散離合も政治の一部ではある。しかし、大政翼賛会的な状況は議会制民主主義を破壊する。ビッグ自民が必ずしも望ましいとはいえない。とはいえ、わが国の司法にアメリカ司法のような「世直し」役を期待するのは難しい。

「アメリカがカゼを引くと日本は肺炎になる」。その言葉は今も重い。対米追従には問題があるが、今の流れを変える必要がある。そのためには、11月3日の米連邦議会中間選挙で、民主党が勝利することに望みを託すしかない、という見方には一理ある。

2026/02/02

 「食品消費税ゼロ」の意味 「ゼロ税率(0%課税/免税)」か、「非課税」か?

2026年2月8日の衆議院選挙を前に、主要政党は競うように「食料品消費税ゼロ」のスローガンを掲げました。争点を潰す意図も見られ、各党がポピュリズム色の強い減税方針へと流れました。 

しかし、この「ゼロ」が、「ゼロ税率(0%課税・免税)」なのか、「非課税」を意味するのかで正体不明です。政党トップが出演したTVの討論会でも、「ゼロ税率(0%課税/免税)」と「非課税」の違いが十分に理解されていないことが明らかになりました。また、新聞報道では「非課税」と判断する動きもあります。しかし、この問題で記者が十分な知見を持っていないと思われるケースも少なくありません。与党や財務省は、「非課税」扱いで、税収減というよりは、実質大増税を企んでいるとの見方もあります。

この違いは、極めて大きいのにもかかわらず、各党の選挙公約からだけでは見えてきません。まさに「ゼロのからくり!」です。有権者自身によるファクトチェックも欠かせません。生活者や政治家も、専門的な知識がないままの感覚では、「ゼロ税率(0%で課税/免税)」より「非課税」の方が?お得“に感じるかも知れませんが・・・・。実際は真逆です。食料品の「非課税」扱いは、逆進対策としての機能は期待できません。むしろ、使われ方次第では、“増税の呼び水“なる可能性すらあります。

「非課税」となると、事業者は仕入れ時に支払った消費税を控除できず、「損税」【事業者が仕入にかかった消費税を負担してしまう問題】を抱え込むことになります。価格転嫁が難しい零細事業者ほど負担が重くなるため、弱い立場の事業者にしわ寄せが集中します。医療機関が社会保険診療サービス「非課税」扱いによって高額機器などの購入時に仕入税額控除を受けられず、経営を圧迫している現状が、その典型例です。

消費者から見ると、「非課税」も「ゼロ税率(0%課税・免税)」も?税がかからない“という点では同じに見えます。しかし、「非課税」によって食料品販売事業者に発生した損税が価格に転嫁されれば、結果的に消費者が負担することになります。「非課税」扱いは、見かけ上は?消費税がかからない”であっても、実質的には?増税の呼び水“になるという指摘は、この点に基づいています。

また、食料品が「非課税」となれば、大規模農家で、大型機械や備品、肥料、農薬など多額の購入しないといけない事業者は、医療機関と同様の問題が生じる可能性があります。インボイス制度で負担が増している零細事業者にとっては、さらに厳しい状況となります。

このように、食料品に対する消費税「非課税」は真の意味での逆進対策にはなりません。事業者にも消費者にも望ましい制度とは言えません。一方「軽減税率」を採用すると、税制が「複雑」になります。事業者の損税を生まない「ゼロ税率(0%課税・免税)」の選択こそが、事業者にも生活者(消費者)にもベストな選択であると考えられます。