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2023/04/16
2023年4月15日:最高裁の「闇」を暴いたNHKのETV「誰のための司法か〜団藤重光 最高裁・事件ノート」は見ごたえがあった
1969年12月、大阪空港公害訴訟で、航空機騒音に苦しむ住民が国を訴えた。この訴訟は、公害で初めて国の責任が問われた。住民は、「夜間の飛行停止の差止」を求めた。2審の大阪高裁では、差止の訴えを認め、住民が勝訴した。ところが、最高裁は、一転して、1981年12月、住民の差止の訴えを退ける判決をくだした。
NHKのETV「誰のための司法か〜団藤重光 最高裁・事件ノート」は、この逆転劇、最高裁判決にいたった過程を丹念に検証したものである。最高裁の「闇」「ダークサイト」「判決の闇取引」を暴いた最高傑作の1つではないか。
この番組では、東大教授(刑法学者)から最高裁判事へ転じた故団藤氏の残したノートをもとに、当時の関係者からの証言を得て、どうして、こうした行政追従の消極司法の姿を露わにする判断にいたったのかを読み解いている。
1981年の大法廷判決にいたる以前は、小法廷の担当裁判官の間では、大阪高裁の判決を踏襲し、差止を認め、住民勝訴のシナリオが決まっていた。ところが、国(法務省)側は、このシナリオを察知し、判決が出る前に、この裁判を、小法廷から大法廷へ切り替える画策をした。
法務省・検察は、検事出身の前・元最高裁長官などを動員し、最高裁へ直訴状提出や電話などで攻勢をかけた。その結果、事件を大法廷へ回付することに成功し、1年半くらいの判決延期の「時間」稼ぎができた。この「構成員の拡大」「時間」の経過に伴い裁判官の入れ替えが進み、そして最初のシナリオは覆った。
団藤ノートには、その過程に関する詳細なメモが記されていた。当時の最高裁長官が、事件担当の裁判長裁判官を長官室へ呼ぶ。その部屋で、法務省出身の前長官からかかってきた電話をその裁判長裁判官に取り次ぐ。・・・・・団藤ノートには、こうした画策は、裁判官の独立を侵すものであるとして、怒りの言葉がつづられていた。
団藤ノートには、最初のシナリオが覆り、老齢な原告団が陣取る大法廷の前で、原告の訴えを退ける判決を読み上げる大法廷裁判長への感情も綴られていた。団藤氏は、よほど忍び難かったのであろう。
多数者の声が支配する行政に蹂躙された少数者が司法に救いを求めた。にもかかわらず、その声に真摯に応えられない最高司法権力。団藤ノートからは、法務省・同省出身裁判官などが陰ひなたで暗躍し、行政追従、消極司法へ転落していく裁判所の姿を読み取ることができる。
興味のある人は、NHKアーカイブスで視聴できるのではないか!
最高裁第1小法廷は、2023年3月9日、裁判官全員一致の意見で、市民のマイナ違憲の訴えを上告不受理で退け、「合憲」のお墨付きまで与えた[最高裁判決令和5年3月9日判決・令和4年(オ)第39号]。
最高裁は、名ばかり三権分立、行政追従の消極司法の顔を露わにした。司法は、やはり「国家権力」なのだ。「三権分立」は、国家権力を3つに分割してデザインしているだけである。司法が、独立して権力を行使してくれるはず、との「夢」をいだくのもわからないでもない。こうしたナイーブな人たちには、前述の団藤ノート、最高裁の判決の闇取引を暴いたNHK/ETVの報道番組が、リスキリング(学び直し)の教材になる。
確かに、ナイーブな市民感覚は大事である。だが、マイナは「民事」ではない。「諫早」などと同じで、国家の統治が絡んでくる。司法が「柔」な判断をするはずがない、国家権力がむき出しになる。ミャンマーや中国、ロシアなどの司法と同じ顔になる。
ずっとマイナ違憲裁判闘争はいい加減にして欲しいと願っていた。最高裁が「合憲」と判断するのがわかっているのに最後まで突っ走る。反マイナでサステナブル(持続可能)な闘いを望む者には迷惑である。身勝手なカミカゼ戦法は時代に合わない。「合憲」「違憲」をはっきりさせないで賢く闘う戦略を採って欲しかった。
今の最高裁に自衛隊は違憲か合憲か問うたらどうだろう。ためらいなく「合憲」と言うかも知れない。「高度の政治性を有するので司法審査になじまない」(統治行為論)などと柔な説教はしないのではないか。
司法が、マイナポータルは合憲に次いで、自衛隊も合憲と判断するとなると、どうだろう。このご時世では「徴兵制度」復活も、保守政権には心躍る仕事になるのではないか?マイナ保険証資格確認オンラインシステム(Mシステム)は、たちまち若者の自動徴兵システム、自動赤紙発券装置に様変わりするのは目に見えている。
専制主義国家のロシアにならって、赤紙はネット配達、徴兵忌避者を政府サイトに公表し、「非国民」「国賊」として、追い詰めるかも知れない。これも、司法に判断を求めたら、合憲とするかも知れない。
大半の憲法学者も、いまや"行政忖度組・喜ばせ組”である。「学生を戦場に送らない!」のような気概はない。「自分が戦場に行かない(-_-;)」では必死になるかも??あげくのはて「合憲か違憲かは、対話型生成AI、チャットジプティ(ChatGPT)に聞いてくれ!」と、驚くべき発言をするかも?
いずれにしろ、今の司法に、絶対に「自衛隊は合憲や違憲か」を問うてはいけない。国家権力の一部である司法に、「ノンポリ(政治的中立)であれ!」など変な期待はしない方がいい。何事についても深読みが要る。
いまや立法府も「悪いことしていなければ、マイナカードで国民監視されても怖がることはない」のトーンである。既存政党頼み、他力本願では、願いは成就できない。
マイナ要らない運動も、もはや「ゼロマイナ」のムシロ旗・竹やり作戦では闘えない。
自力本願、新党の立上げで、自らが立法の場に打って出ていき、国・地方の立法府でマイナパンデミック退治に乗り出す力量と行動が求められている。
2023/04/15
マイナカード持たない人はネットで公開されるかも??
先の自治体選挙でも、「マイナカード」はほとんど争点にはならなかった。その一方で、マイナパンデミックは猛威をふるっている。
マイナ要らない運動は、最高裁から「マイナ合憲判決」をもらっては憂い、大都市の片隅でムシロ旗、竹やりで運動を続けている。サステナブル(持続可能)な運動の展望が開けていない。国や自治体に議員を送り足場・橋頭保を築かないと、こうなる。
多くの良識ある市民は、マイナカードには懐疑的である。だが、所詮小市民。目の前にぶら下げられたポイントの人参で「まあイイか」、白旗をあげる人もうなぎ登りだ。
既存のマスメディアは、政府の巨額の血税を乱費したマイナ広報で潤う。世はDX(デジタル化)時代、「国民監視は仕方がない」、「マイナカードで便利な社会」へ転向しよう。偏向報道で政府に睨まれるよりは益し!! いまや、こんな姿勢かも知れない。
こうしたマスメディアの姿勢も、やはり、国や自治体にマイナ問題で声をあげる議員、足場・橋頭保がないことが大きな原因だ。
革新という旗をあげる政党陣営にも、この問題で闘う力量は今一つである。むしろ、権威主義的、翼賛的な時流に迎合的なようにもみえる。やはり「マイナパンデミック」というシングルイシュー(単一争点)で闘う、「マイナ(背番号)から国民を守る新党」「マイ国党」「マイ国新党」が必要だ。何度も説いてきた。だが、リーダーシップをとれる人材がいない。
このプログも、他人のふんどしで、小言三昧常態。自前のふんどしで闘いたい。
マイナンバー法改正案が4月14日に、衆院本会議で審議入りした。2024年秋予定の現行健康保険証の廃止に向けた役人の悪巧みはさらにもう一歩進む。マイナンバーカード携行を実質的に義務化することが狙いだ。このため、政府は高齢者らの代理人に交付する要件を緩めるという。8割近くに達した普及率はさらに上げ、持たない人には「非国民」のレッテルを貼る。いつものパターンだ。
法案はマイナカードと保険証の一体化を進めるうえで必要な措置を盛り込んだ。マイナ保険証を持ちたくない人には「資格確認書」を発行する。だが、確認書の期限は1年とする方針だ。カードの利用者よりも受診時の窓口負担を割高にする検討も進む。カードとの一体化への移行を促す悪だくみだ。
マイナ保険証を持たない人は「反政府的な人物だ、非国民、国賊と入れ墨し、さらし者にする・・・」。政府による人権侵害である!!今の政権は、しばしばとても民主主義国とは思えないとんでもない発想をする。
政府は、全国の医療機関と薬局に、マイナカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証資格確認オンラインシステム」のコンタクトポイント設置を急いでいる。国民皆保険制度で逃げ切れないマイナ保険証の悪用だ。実質、「国内パスポート(内国人登録証)」を国民全員に携行させようとしているのは明らかだ。
このマイナ保険証の仕組みは、車輛のナンバーから追跡する「Nシステム」に匹敵する、国中に張り巡らされた、いわば「Mシステム」だ。
Mシステムは、いつのまにかマイナ保険証+顔認証情報(顔パス)を使った本人確認のつくりになっている。顔認証+背番号カード式自動改札システムである。医療機関などに設置されたMシステムの背番号と顔認証(生体認証)データで国民の移動の自由を監視する、人権侵害的な仕組みに大きく変身している。
にもかかわず、この面からの批判の声はあまり聞こえてこない。監視されることに慣れ切ってしまった国民の実像なのかも知れない。日弁連などを除けば、生体認証の公有問題の深刻さを指摘する声は小さい。
Mシステムは、顔認証情報という生涯不変のセンシティブ情報を収集・国家管理しようとする専制主義国家的な仕組みだ。仮釈放中や執行猶予中の性犯罪者の再犯防止のために「GPS(全地球測位システム)機器の装着を義務づけるのと同じだという意見もある。「マイナ保険証は、マイナGPSカード」?
このご時世では「徴兵制度」復活も、保守政権には心躍る仕事になるのではないか?マイナ保険証、Mシステムは、やがては、国家が収集した全国民の医療情報をAI分析して兵隊を選別する「自動徴兵システム」、「自動赤紙発行装置」に様変わりするのは目に見えている。
折しも、ロシアでは、赤紙をネットで通知し、招集に応じない者の氏名などをネットで公開するという。わが国の役人も、DX(デジタル化)に悪乗り大好きである。このロシアの専制主義・権威主義国家の仕組みをまねるのではないか。
政府のよるマイナカード未取得者サイト、マイナ徴兵忌避者サイトの立ち上げも、非現実的とはいえない。サイトにアップされたら、医者にも診てもらえず薬局で薬ももらえない・・・・。
市民感覚では「こんなシステム・装置、憲法9条、平和憲法に反するのは当り前!」。だが、いまや柔な憲法学者、官忖度ファーストの連中がゴロゴロの状態だ。彼らに意見を求めても「高度の政治性ありで、発言しない!」とのたまうかも??「沈黙は金」、「回答は、マイクロソフトBing チャットジプティ(ChatGPT)に聞いてくれ!」の姿勢かも。いまほど憲法学者の存在感の薄い時代はなかった。ますます大学人が劣化し、対話型生成AI(人工知能)が流行るのではないか??
「もうすぐ、劣化した文系の大学はその役割を終え、対話型生成AIにその席を引き渡す??・・・・」こうした識者の予言は、それほど遠くない時期に現実になるかも知れない。
住基ネットのときは、リーダーシップをとれる人材がわんさいた。しかし、今のマイナ要らない運動では、そうした人材がいない。
ゼレンスキーがいるからウクライナは、サステナブルな闘いができている。彼がいなかったら、ウクライナは絶滅していたかも知れない。
マイナ要らない運動にはマイナパンデミックを撲滅する新たなチーム力が要る。オールジャパンのシングルイシュー(単一争点)政党を立ち上げて、人権侵害的なマイナパンデミック拡散にストップをかける道を探らないといけない。
竹やり・ムシロ旗運動や大本営発表の解説も大事ではある。だが、それだけでは絶滅危惧種になる。どの運動も、しぶとさに加え、したたかな戦略で駆け出す行動がいる。
マイナ要らない運動に栄光あれ!!
2023/03/10
司法も、「国家権力の1部」!!
名ばかり三権分立、行政追従の消極司法で、3月9日に、最高裁は、市民のマイナ違憲の訴えを上告不受理で退け、「合憲」のお墨付きまで与えた。
司法は、やはり「国家権力」なのだ。「三権分立」は、国家権力を3つに分割してデザインしているだけだ。
司法が、独立して権力を行使する「夢」をいだくのもわからないでもない。でも、マイナは「民事」ではない。「諫早」などと同じで、国家の統治が絡んでくる。司法が「柔」な判断をするはずがない、国家権力がむき出しになる。ミャンマーや中国などの司法と同じ顔になる。
ずっとこんな裁判闘争は止めて欲しいと願っていた。「合憲」と判断するのがわかっているのに突っ走る。大迷惑である。「合憲」「違憲」をはっきりさせないで闘う賢さを欠いている。
いまや立法府も「悪いことしていなければ、マイナカードで国民監視されても怖がることはない」のトーンである。
もはや「ゼロマイナ」のムシロ旗作戦では闘えない。
「ゼレンスキー」を探し出し、「ウイズマイナ」で、単一争点政党・「マイ国党(マイナンバーから国民を守る党)」を立ち上げて、マイナパンデミックと賢く戦わないといけない。
2023/02/18
「デジタルID」とは何か(2)?:デジタル化(DX)に悪乗りしたマイナICカードは、デジタルで人権エコシステムを破壊する邪悪なツールだ!!
私たちは、デジタル化(DX)の真っただ中に置かれている。デジタル化(DX)を好意的にとらえるか、そうでないかは人によって違う。
とはいっても、社会、経済のあらゆる部門でDXの影響は避けられない常態にある。「デジタルID(digital identity)」に対する考え方は、人によって違う。ただ、ネット上でのなりすましその他さまざまなネット犯罪を防ぐには、何らかの「デジタルID」が必要だ。
もっとも、学者でも「デジタルIDとは何か?」が分からない人も少なくない。最近読んだ記事で「この人、マイナICカードの本質を分かってないな?」と感じたこともあった。普通の市民のいたっては、もっと理解するのは難しいのではないか??
「デジタルID」とは、やさしくいえば、インターネットとパソコン(PC)またはスマホを使って、公共機関(国や自治体、公立学校など)や民間機関(会社その他の企業や学校など)のさまざまなウエブサイト(ホームページ/デジタルプラットフォーム/ポータルサイトなど言い方はさまざま。)にリモート(遠隔)アクセス/ログインする際に、本人確認(身元確認+当人認証)するに必要な道具(ツール)を指す。
主なものをあげると、ID+パスワード、PKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)、生体認証(顔・虹彩・指紋など)がある。
マイナカードは、PKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)方式のデジタルIDを入れたICカードだ。
住民票の写しが欲しいとする。以前は市町村役場に出かけて行って、対面で申請する、あるいは郵送で申請するしかなかった。しかし、デジタルシフト/デジタル化が急激に進み、今日では、インターネットを使いパソコン(PC)やスマホなどからオンライン申請ができる。
また、電気やガス、上下水道代その他の公共料金の支払/銀行口座引落領収書、クレジットカードの利用額明細書なども、以前は紙/文書で通知を受けていた。しかし、今日では、デジタル/ネットでの通知が当り前になってきている。
スマホで、アプリを使ってクレジット利用明細を見たいとする。その場合、クレジット会社のウエブサイト(ホームページ/デジタルプラットフォーム/ポータルサイト)にアクセス/ログインすることになる。その際には、IDとパスワード(2段階認証)を入れるか、さらにはネットワーク暗唱番号ないしQ&A操作(3段階認証)をしないといけない。これが、まさにID+パスワード方式のデジタルIDだ。
また、人によっては、IDやパスワードなどを覚え切れないということで、顔認証(FaceID)機能を使うことになる。。これが、まさに生体認証(顔・虹彩・指紋など)方式のデジタルIDだ。
ただ、住民票写しのオンライン申請などには、理由がわからない制限がある。住民票の写しをオンライン申請する場合には、市町村のウエブサイトにログインする際のデジタルIDとしては、法律で、“マイナナンバーICカードに格納されたPKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)以外のデジタルIDは使えない”ことになっている。国の役人が、国や自治体のウエブサイトにログインする際の個人用のデジタルIDとして、民間IT企業が開発したものは使わせないという方針で、政府規制をかけているためだ。
つまり、民間IT企業がデザインした簡易で利便性の高い「ID+パスワード」方式や生体認証(顔・虹彩・指紋など)方式のデジタルIDは使えない。各自治体も、住民票のオンライン申請などでは、住民にPKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)方式のデジタルID、つまりマイナICカードの利用を強制するしかない。
◆総務省に潰された東京渋谷区での民間活力を使った個人向けデジタルID
民間のスタートアップ、IT企業である東京都港区にあるBot Express社は、LinePayのアプリをベースにデジタルIDを開発・販売している。
東京都渋谷区は、2020年4月から、マイナナンバーICカードに格納されたPKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)方式のデジタルIDを使わず、Bot Express社とタックルを組んで同社のデジタルIDを使って、住民が住民票のオンライン申請をしたうえで住民票の郵送を受けられる制度を始めた。
この新システムでは、スマホで撮影した顔写真付き身分証とスマホのカメラで写した本人の容貌を送信、AI(人工知能)がそれらを照合し、本人と確認されれば住民票の写しを後日郵送する手順になっている。
AIによる判別がつかなかった場合には、自治体職員が目視で確認して、住民票を郵便で提供することになっている。金融機関で顧客が口座開設の際に利用するなど、オンラインで身元確認が完結する「eKYC(electronic Know Your Customer)」と呼ばれる手法と同じだ。
ちなみに、eKYC方式のデジタルIDは、犯収法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)で、マネー・ローンダリングやテロ資金供与防止を目的として、特定の事業者が取引する際の本人確認等でも認められている。eKYC方式のデジタルIDは法認されたセキュリティの確かなものである。
東京都渋谷区は、2020年4月に、Bot Express社社のデジタルIDを導入し、同区のウエブサイトのログインに利用できるようにし、住民票のオンライン申請をできるようにした。しかし、開始直後、総務省が「待った!」をかけた。
総務省は、2020年4月3日に、全国の市町村への「技術的助言」として、事実上同サービスを採用しないよう求める通知をした。住民票の交付には厳格な本人確認が必要であり、マイナンバーカードに搭載したPKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)よりも性能が劣るeKYCの採用は「適切でない。」というのが理由だ。
総務省は、2021年9月には、この通知にあわせて、住民票の写しの交付に関連する省令を改正した。これにより、住民票のオンライン申請のウエブサイトへのログインの際の本人確認には、マイナンバーICカードに搭載されたPKI方式のデジタルIDしか認められないことになった。
民間IT企業のデジタルIDを使った渋谷区のオンライン申請は法令違反とするとの規定を設け、「悪法も法なり」の手法で同社のデジタルIDの自治体への販売を停止に追い込んだのである。
Bot Express社は、総務省の画策により、他の自治体へのサービス展開が事実上できなった。そこで、2022年9月10日に、同社は、総務省(国)の通知は違法であるとして、東京地裁に提訴した(総務省提訴のお知らせ|Bot Express (bot-express.com)。
東京地裁は、昨年末(2022年12月8日)にようやく判断をくだした。判決では、LINE申請では偽造された本人確認書類でも審査を通過する可能性があるとした上で、「不正の手段がひとたび確立されれば住民基本台帳制度の根幹への信頼が揺らぐことになりかねない」と指摘した。総務省が通知した厳格な本人確認は、行政のIT化を推進するデジタル手続法とも整合するとした(東京地判令和4年12月8日判決・東京地判令和4年(行ウ)第344号)。
東京地裁は、行政追従の消極的司法の姿を露わにする判断をくだし、原告IT企業の訴えを認めなかったのである。
この判決を下した裁判官は、スマホ全盛時代に入り、アメリカやオーストラリアなどでは、IDカードは使っていないことや、PKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)方式でなくとも、他の方式のデジタルIDでも、十分に安心・安全であるとの知見を欠いているのではないか?
総務省のやり方はむろんのこと、裁判所の判断にも、「官尊民卑そのもの」「民業圧迫」との厳しい批判がある。
もちろん、東京都渋谷区が採用したBot Express社の顔認証(顔パス)方式デジタルIDが最良の選択とは思えない点もある。顔認証(顔パス)式デジタルIDには、人種差別など人権侵害につながるとの厳しい声もあるからだ。
◆アメリカの個人向けデジタルIDは?
アメリカでは、スマホ全盛時代に入り、将来を見据えて、ICカードやカードリーターが必要なPKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)技術を使ったデジタルIDを採用しようとする動きはまったくない。こうした考え方は、政府機関ばかりではなく、民間企業でも同様である。
アメリカでは、PKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)は、素人には煩雑で扱いにくい、ガラパゴス化した過去の技術、という見方が大勢を占める。
むしろ顔認証(顔パス)技術(FRT)利用に傾斜する傾向が伺える。加えて、データセキュリティ、デジタルIDとして、ブロックチェーン技術を活用しよういう動きすらある。
EUでも、ブロックチェーン技術を活用したデジタルIDへの転換の検討を始めた。
2017年にエストニアの国民総背番号(マイナ)システムがサイバー攻撃を受け、ICチップ管理機能が不全になった。人口約133万人弱の都市国家で、約75万のICカードが利用不能となり、正常化に当局は多大な時間を費やした。わが国のマスメディアなどが持ち上げるICカードを使ったエストニアの国民総背番号システムは、以外と脆弱なようだ。
これを機に、エストニア政府も、KPI技術を格納したICカードを使った既存の中央集約管理システムを、ブロックチェーン技術を活用する分割管理型のデジタルIDの仕組みに移行することを検討し始めた。
◆アメリカのデジタルIDでは、IT素人にはフレンドリーでない煩雑なPKI技術は使っていない
いずれにしろ、EU諸国とは異なり、アメリカは、市場主義を大事にする国である。同国では、わが国のようなマイナンバーカードにPKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)方式の公定/国定のデジタルIDを格納して配るような不気味な政策は、絶対にコンセンサスが得られない。
今、アメリカでは、連邦や州行政機関では、「ID.me(アイデー・ドット・ミー)」という民間のスタートアップIT企業が開発・販売しているデジタルIDの利用が広がっている。(アメリカでデジタルIDにPKI技術が使われなかったのは、PKI技術がIT素人には煩雑で、ID.meのような簡素な方式が好まれたことによる。)
ID.meは、ウエブサイトのログインには、アカウントID とパスワード、複数のアナログ身元確認証の写しデータ、さらにはスマホやパソコンのウエブカメラを使って自撮りした写真画像(selfie image)の提出を求めるデザインだ。有人ビデオ(動画)チャット【Video Chat/インターネットを通じてお互いの映像を見ながら、リアルタイムにコミュニケーション・会話ができるサービス】の利用も可能だ。若いデジタルネイティブ、スマホネイティブ層には人気だ。
ところが、2022年に入ってから、ID.me社が開発・販売するデジタルIDサービスが、人権エコシステムを欠くのではないかとの理由で、連邦議会民主共和両党の議員からストップがかかった。
こうした指摘を受けて、連邦課税庁(IRS)は、電子申告やオンライン申請の際のウエブサイトへのログインにはID.me社のデジタルIDを利用を継続しているものの、スマホやパソコンのウエブカメラを使った自撮りした写真画像(selfie image)の提出の利用を止めている。
一般に、アメリカでは、監視カメラやデジタルIDなどに、生涯不変の生体認証情報を利活用することには否定的な見方が強い。IRSはいまだ世論や連邦議会の動向を注視している。IRSが、ID.meを継続して使うのか、他社のデジタルID、Login.govに代えるのかも含め、2023年2月にいたっても、新たな方針が出されていない。
◆デジタルIDのデザイン不正義(design injustice)追及の手をゆるめてはならない!
「デジタルID」は、個人向けのものだけではない。「個人以外」、つまり、会社や学校法人、市民団体(NPO/NGO)向けのものもある。「個人以外(法人等)」向けのデジタルIDには、民間IT企業が開発したさまざまな方式が使われている。したがって、個人向けデジタルIDのゲストな選択には、個人以外(法人等)向けのデジタルIDと対比で慎重に考える必要がある。
いずれにしろ、デジタルIDのデザインに対する国民監視が行き届かないと、デジタルIDはたちまち国民をデータ監視する「凶器」に変容する。わが国の現状がそうである。
アメリカの研究者は、ユーザー(市民)が、デジタルIDの「デザイン不正義(design injustice)」をゆるさないとする姿勢を保つことが大事だ、と強調する。また、デジタルIDのデザインに人権エコシステムをどのように組み込むべきかを真剣に勉強している。
◆わが国の国有デジタルIDは「民業圧迫」??
わが国では、PKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)方式が、マイナICカードに格納され、あたかみ公定/国定のデジタルIDとしても法認されてしまっている。ということは、国の役人は、個人用のデジタルIDは、ウエブサイトへの単なるリモートアクセス/ログインツールではなく、国民監視のツールとしての利用するの方が大事と考えているのだろう。
こうしたデジタルID「デザインの不正義」にストップをかけられる研究者もほとんどいない。マイナパンデミックへの抵抗勢力の人たちも概して勉強不足だ。国が個人向けデジタルIDサービスを独占することが「民業圧迫」につながる?との考えにも及ばない人が大多数だ。
わが国には、独立した研究者は少ない。国立大はもちろんのこと、慶応や中央など私大の大勢の研究者までもが、総務省などのお抱えに化してしまっている。国の研究助成など甘い蜜でささやきかけられれば、誰しも誘惑の負けてしまうのだろう。気持ちが分からないでもない。
結果、逆に、PKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)方式のガラ系のマイナICカードに異論を唱える研究者の方が絶滅危惧種になってしまっている。オーマイゴッドだ!!
◆やはり「マイ国党」が必要だ!!
マイナパンデミックにストップをかける運動をする場合、「デジタルIDとは何か」、とりわけ「個人向けデジタルID」についての深掘りして欲しい。でないと、先が見えなくなりかねない。
わが国は、「リアルID」を継ぎ足し「デジタルID」に衣替え、エスカレート利用する手法をとっている。
わが国の政府は、国民皆保険制度で逃げ切れないマイナ保険証という名の国内パスポート(内国人登録証)を国民全員に携行させ、医療機関などに設置された背番号と顔認証(顔パス/生体認証)データで国民の移動の自由を監視する仕組み(車輛のナンバーから追跡するNシステムに匹敵する「Mシステム」)/顔認証+背番号カード式自動改札システムを構築する構えだ。
Mシステムは、医療機関や薬局などにマイナ保険証+顔認証情報を使ったマイナ保険証資格確認オンラインシステムの端末を設置した高度な「監視ツールづくり」をする国の役人がの悪巧みが実ったケースだ。
Mシステムに、国民は一層不信感を露わにしている。各界からこの監視ツールつくりに対する反対の大合唱が続いている。
Mシステムは、国民全員の医療/健康データを、国家が管理し、平和憲法をないがしろにする、自動徴兵システム、自動赤紙発行装置に変貌するのではないか?
現在のようなていたらくの政治状況では何が起こるかわからない。
政府は、公定/国定のICカード、マイナICカードが、デジタル化(DX)に必須の道具(ツール)であるように装うことで、国民全員に国内パスポートを常時携行させ、さらに精緻なデータ監視国家をつくろうと画策している。また、公的機関へのデジタルアクセスには、PKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)方式のデジタルIDしか使えないようにして、トータルな国民監視を容易にするシステムつくりに懸命だ。
いずれにしろ、デジタル化(DX)にかこつけて、いわば“国定のKPI(公開鍵/電子証明書/電子署名)式デジタルID”をICカードに組み込み、国内パスポートとして国民に強要する“集団的ノイローゼ”は、いただけない。
国がマイナポイントと地方交付税で懐柔し、国民や自治体を“欲しがりません勝つまでは”時代の「赤紙(レッドカード)配付おめでとう」に似た現象が起きている。
マイナカードというIC仕様の赤紙配付で国や担当大臣などがマイナポイントと地方交付税で国民や自治体をあおり、あたかも戦時下のようにマスメディアが協力しているのも異様だ。
マイナカードを持たない人は「国賊」、“国賊一家”には本来無料のはずの給食費などを有料にするという頓珍漢の自治体首長も現れる始末だ。山本一太群馬県知事や河村たかし名古屋市長など、保守良識派は、「どうかしている?」と見て、こうした蛮行を糾弾している。
そもそも、マイナンバーは、現在国民民主党にいる古川元久議員らが旧民主党時代の旗振りをした愚策だ。彼らの構想は、いまやこの国を確実に権威主義国家に転落させている。責任は重い。
◆ガラパゴス化した愚策のエスカレート:新型マイナカード配付計画
スマホ全盛時代に入り、デジタルIDをスマホに直接格納するモデルの利用が広がっている。ICカードは、紛失・悪用の可能性あり、新たななりすまし犯罪につながりかねないからだ。
現在のマイナカードは、カードの表面に顔写真や氏名、住所、性別、生年月日が記載されている。しかし、こうした情報は内蔵されているICチップにも含まれている。
政府は、2026年を視野に、新型のカード導入を検討し出した。新仕様では、個人情報を見られたくない、または性別を載せたくないなどといった声にも配慮して、カードの表面に、こうした情報を載せないことが検討されている。また、18歳以上の場合、「発行から10回目の誕生日まで」とされているカードの有効期限についても見直すとのことだ。
国の役人は、ICカードを使わない世界の流れに抗して、時代遅れのPKI(公開鍵・電子証明書・電子署名)方式のデジタルIDに固執し、血税の垂れ流しを続けようとしている。
“止まらない、止められない新型マイナCIカードパンデミック”でも、国会にはそれを止めようという見識ある活発な動きは見られない。
◆急がれる人権エコシステムを盛り込んだデジタルIDの確立
わが国が、デジタル化(DX)の波を悪用し、中国のような専制主義国家を志向するようでは、世界の民主国家陣営から相手にされなくなる。デジタルID問題で国策フィーストの自治体首長その他の政治家のリスキリング(学び直し)が急務である。
同時に、デジタルIDに人権エコシステム(the human rights ecosystem)を組み込むことも避けてはとおれない。民主主義を志向するわが国の市民、政党、市民団体に課された最重要課題の1つだ。
もちろん、ネットを使って危ない国策を評論する、街頭でのムシロ旗をあげたマイナパンデミック撲滅運動も大事である。
しかし、シングルイシュー(単一争点)の「マイ国党(マイナパンデミックから国民を守る政党)」を立ち上げ、国会や自治体議会へ議員を送る軌道をスタートアップさせないといけない。リーダーシップが問われている。
このままでは、全国民がデジタルIDで●●の穴まで監視される超データ監視国家、データ収容所列島が誕生してしまう。若いカップルが子どもを産まない選択を強めるかも知れない。
コロナ禍を契機に、デジタルシフトは急激に進んでいる。西欧型民主主義国家を目指すとをうたった憲法を持つこの国においては、人権エコシステムを盛り込んだデジタルIDの確立が急務である。
デジタル化(DX)に悪乗りしたマイナICカードは、デジタルで人権エコシステムを破壊する(Digital disruption of human rights)邪悪なツールである!!
2023/02/10
■「デジタルID」とは何か? 〜包括的な人権エコシステムと共存できないデジタルIDは世界の恥
≪「ゼロマイナ」から「ウィズマイナ」時代の課題≫
◆「デジタルID」とは何か?〜 包括的な人権エコシステムと共存できないデジタルIDは世界の恥
「デジタルID」とは、やさしくいえば、デジタル/ネットの世界での本人確認(身元確認+当人認証)の仕組みである。
パソコン(PC)やスマホを使い、インターネットでやり取りする空間/世界を、「デジタル空間/デジタルスペース」という。「サイバースペース/電脳空間」または「オンライン空間」ともいう。これらの言葉は、ほぼ同じ意味である。目に見えない(非対面の)“インターネット空間”と言った方が分かりやすいかも知れない。
一方、対面でやり取りをする空間を「現実空間(real space)」という。「現実空間(real space)での対面・文書での物理的な本人確認(physical identity)」のための公的身分証明書、リアルIDとしては、久しく運転免許証、健康保険証などが使われてきた。
2003年からは、PKI(公開鍵/電子証明書)を格納した住基ICカード(住民基本台帳カード)でのデジタルIDが導入された。しかし普及せず、廃止された。PKIが格納されたICカード、デジタルIDは、電子納税申告向けの税理士会が発行するICカードなどの形で細々と続いてきた。
その後2016年からはPKIを格納したマイナンバー(個人番号)カード(マイナカード)が交付された。PKY(電子証明書)を格納したマイナICカードは、一種のデジタルIDともいえる。しかし、政府が悪乗りしたマイナカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証資格確認オンラインシステム」は、いつのまにかマイナ保険証+顔認証情報(顔パス)を使った本人確認のつくりになっている。
マイナ保険証を持ちたくない人には資格証明書を発行するとか・・・。「反政府的な人物だ、国賊と入れ墨し、さらし者にする・・・」人権侵害である!!今の政権は、しばしばとても民主主義国とは思えないとんでもない発想をする。
国民皆保険制度で逃げ切れないマイナ保険証という名の国内パスポート(内国人登録証)を国民全員に携行させようとしているのは明らかだ。医療機関などに設置された背番号と顔認証(生体認証)データで国民の移動の自由を監視する、人権侵害的な仕組みに大きく変身している。マイナ保険証の仕組みは、車輛のナンバーから追跡するNシステムに匹敵する、国中に張り巡らされた、いわば「Mシステム」、顔認証+背番号カード式自動改札システムである。
まさしくマイナ保険証システムは、顔認証情報という生涯不変のセンシティブ情報を収集・国家管理しようとする専制主義国家的な仕組みである。にもかかわず、この面からの批判の声はあまり聞こえてこない。監視されることに慣れ切ってしまった国民の実像なのかも知れない。市民団体の多くは声高に「ゼロマイナ」を叫ぶ。だが、日弁連などを除けば、生体認証の公有問題を深刻さを指摘する声は少ない。日本人のプライバシー意識は、グローバルサウスの人たちよりも低いのかも知れない・・・・?
いずれにしろ、わが国は、対面で使う物理的な「リアルID」であるマイナカードに継ぎ足し、非対面でも使える生体認証式「デジタルID」に衣替え、ネット空間/デジタル空間/オンライン空間での本人確認にもエスカレート利用させようとする手法をとっているようにも見える。
しかし、グローバルに見ると、政府デジタルプラットフォーム(DFP)であるマイナポータルのような中央集権的な生体認証式デジタルIDシステム、本人確認デジタルプラットフォーム(DFP)は、人権エコシステムがデザインされておらず人権侵害を招く、として厳しい批判にさらされている。こうした人権エコシステムを欠くデジタルIDの導入・活用は、西欧型民主主義国家には似合わない。加えて、データセキュリティの面でも脆弱、危ない。
インドは、2013年に、中央集権的な生体認証式デジタルIDシステム(アドハー/Aadhaar)(CNNニューズ91号参照)を導入している。わが国のNECが立ち上げに協力した。(NECが生体認証システムを提供しているインドのアドハープログラムの登録者数が10億人を突破 (2016年10月12日):プレスリリース | NEC)。わが国では、海外で問題ビジネスを展開するハイエナIT企業に対する国民の監視体制は未整備である。人権DDを問うNGOも声も今一つだ。
アドハーは、インド政府の固有識別番号庁(UIDAI=Unique Identification Authority of India)が管理・運営をしている。UIDAI は、PKIの秘密鍵が格納されたQRコードを電子メールで送付する形でデジタルIDを発行している。UIDAIは、度々ハッカー攻撃にあい、大量の国民データが漏洩する問題を引き起こしている。後追いでプライバシー保護法が制定されているが、どこかの国と同じで、ザル、効き目の悪い内容のようだ。 ( また、2017年には、エストニアのデジタルIDカードチップ(識別子)システムがハッカー攻撃を受けた。おおよそ75万人が、IDカードの利用停止に追い込まれた。わが国の国民背番号万歳を唱える政府、政府系マスコミや識者は、エストニアは「世界に誇る電子立国」と持ち上げる。だが、同国が採用し、わが国が真似た中央集権的なデジタルIDシステムの危うさを正面から議論しようとしない。臭いものには蓋をする。
アメリカのワシントンD.C.に本部を置く世界銀行(World Bank/通称「世銀」)は、グローバルサウス(Global South/途上国)のデジタルIDシステム導入・拡大を支援するためのプログラムを組み、推進してきている。About Us | Identification for Development (worldbank.org)。世銀総裁は「インドの中央集権的な生体認証式デジタルIDシステムアドハーは貧困キラー(poverty killer)」である、と称賛した。
その後、世銀は、「開発のためのID実施指針(ID4D /Identification for Development Initiative)」を出し、財政支援と紐づけし、生体認証式デジタルID実証実験へのグローバルサウス諸国の参加を促した。世銀は、35カ国へ15兆ドルを超える財政支援を行った。
世銀が称賛したインドのアドハーのような生体認証式デジタルIDモデルは、グローバルな人権エコシステム(global human rights ecosystem)に対するインパクト、副作用が大きい。こうした国際機関の近視眼的な見解には大きな疑問符がつき、人権NGOや進歩的な学者などからの批判が渦巻く。
ニューヨーク大学(NYU)ロースクールに組織された「人権とグルーバル正義センター」Center for Human Rights and Global Justice、NYU School of Law)は、デジタル福祉国家と人権プロジェクトを組み、世銀の「開発のためのID(ID4D)実施指針」(ID4D Initiative)を検証した。
そして、2022年6月に、報告書『地獄に向けたデジタル道の舗装:デジタルIDのグルーバルネットワーク構築における世銀の役割入門(A Primer on the Role of the World Bank and Global Networks in Promoting Digital ID)』(A4 103頁)を作成、世界に向けた公表した。
このNYU報告書は、世銀のデジタルID拡散計画を徹底的に批判し、監視資本主義(surveillance capitalism)を助長し、人権侵害の効率化(efficiency of human rights violations)を促進していることなど「暗黒部(dark side)」、「不正義(injustice)」を指摘している。とりわけ、世銀のデジタルID拡散計画は、単なる1私企業の企画ではない。ID4D実施指針は、人権リスクの高い計画ではあるが、グローバルな知名度もある国際機関によるである。世銀が鼻先にぶらさげた人参でグローバルサウスに怒涛の流れが生まれたとしても止めるのは至難である。この報告書でも「真贋が問われる」と吐露している。
この報告書は、世界各国の人権団体、専門職、ジャーナリストや人権活動家など、幅広いステークホルダーがタイアップし、世銀の人権エコシステムを欠いた危険なデジタルIDモデル、デジタルIDプラットフォームの拡散にストップをかけるように訴えている。加えて、この課題で、グローバルな人権エコシステムつくりに向けた、グローバルサウスとグローバルノースの団結を訴えている。
このNYU報告書は、グローバルサウス諸国に中央集権的な生体認証式のデジタルID構築を奨める世銀の」開発のためのID(ID4D)実施指針」(ID4D Initiative)が、グローバルな人権エコシステム構築に大きな障害となると警鐘を鳴らした啓蒙書である。デジタルIDは不要であるとか、中央集権的なデジタルプラットフォームではなく、新たな分散管理型/自己主権型なブロックチェーン技術を活用したデジタルIDを採用すべきであるとか、具体的を示したものではない。
仮にデジタルIDを導入/整備するとしても、ブロックチェーン技術などを活用した分散管理型/自己主権型のデジタルIDを推進する時代に入っている。また、シンガポールやオーストラリアなどを見ても、デジタルIDをICカードに格納し、持ち歩かせる方式はとっていない。スマホやPC,タブレット端末にデジタルIDを格納する方式に切り替わっている。官民双方のセクター共用の個人【自然人)用のデジタルID(PKI)を格納した国定ICカードの普及は時代遅れの発想である。
アメリカ、カナダなど北米でも、民間のIT企業などが共同で構築したデジタルプラットフォーム(DPF)を使ってデジタルIDを提供する方向にある。官が個人向けの中央集権的なシステムを構築し、使い方を誤れば人権侵害につながる公定ICカード格納のデジタルIDの利用を強制する方向にはない。
わが国のマイナポータルのようなICカードを使った中央集権的な生体認証式デジタルIDシステムは、すでにガラパゴス化しているのではないか? 役人が先を見誤っているマイナパンデミックの暴走を止めないといけない。
政治はマナパンデミックに対し概して稚拙である。デジタルシフトの流れを悪用したこの恒常的人権侵害システムへの血税の垂れ流しが止まらない!!
2023/01/28
「ゼロマイナ」から「ウィズマイナ」で利用制限を目指し、サステナブル(持続可能)な運動を展開しよう!
◎マイナカードの濫用で、このままでは、日本は中国を抜く超データ監視国家になる!!
◎「ゼロマイナ」から「ウィズマイナ」で、リアル/デジタル空間でに背番号の危ない利用制限を目指そう!
◎マイナパンデミックをストップできない力量不足の市民運動体をサステナブル(持続可能)に再生するには、オールジャパンの『マイ国党』が要る!
住基ネットストップ運動では、各界から多様な参加を得ることができた。大物揃いで、迫力があった。このため、オールジャパンの反対運動ができた。しかしマイナンバー反対運動では、それがほとんどできていない。マイナパンデミックが止まらない。絶滅寸前のゼロマイナ運動を再興するには、歴史を振り返り、学び直し(リスキリング)が要る。
最大の原因は、オールジャパンの運動拡大を目指せる「ゼレンスキー」タイプの人材がいなかったことかも知れない。リーダーシップが問われている。ウクライナはゼレンスキー大統領がいたから、ここまで善戦できている。
大都会の片隅でのビラ撒きのムシロ旗運動、既存の政党に依存した議員会館やシティホールでの報告会、ブログへの大本営発表のオウム返し等々。運動は細々と持続してはいるが、明らかに力量不足だ。何度も押し寄せるマイナパンデミック退治は至難である。竹やりで闘うのでは、持続可能(サステナブル)な運動は至難。確実に絶滅危惧種になりつつある。
「マイナンバーは違憲」の司法判断も期待薄である。東京地裁は、22年12月、LINE使う住民票受け取りサービスは適法ではない、との判決をくだした。国定のマイナンバーしか認められないとし、背番号で国民を徹底監視する国の方針のエールを送ったわけだ。行政追従の消極司法に依存した裁判闘争では、市民を救うことは難しい。
「三権分立」は、国家権力を3分割した仕組みである。ということは「司法」は国家権力なのである。「司法」が「行政」に追従し、国民の人権を守ろうとしないときには、「立法」を使いこなす必要がある。しかし、立法を担う既存の政党や政治家が国民の人権を守ろうとしないときには、市民自らが政党を立ち上げないといけない。でないと、デジタル化/デジタルシフトとをうたい文句にしたデータ監視/専制国家化構想に太刀打ちできない。
このままでは、マイナパンデミックが繰り返され、国民の日常のすべてが背番号監視されるデータ専制主義国家、データ収容所列島に成り下がる。民主主義国家の香りもしなくなる。
「ゼロマイナ」から「ウイズマイナ」の転換にあった運動を展開し、マイナパンデミックに歯止めをかける必要がある。
デジタルシフトが進み、デジタルネイティブが社会の中核を占める時代が間近である。マイナ保険証で、国民全員の医療情報/人格権を国家管理し、デジタルネイティブの若者たちを自動徴兵/選別できる制度の構築をゆるしてはならない。
このためには、ムシロ旗運動だけでは勝てない。住基ネットの時のようなウイング(党派)を問わないオールジャパンのマイナパンデミック終息に焦点を絞った新たな単一論点政党(シングルイシュー政党)が必要だ。「マイ国党(マイナンバーから国民を守る党)」(仮称)を立ち上げないといけない。
一般に、起業家は勢いがある。だが、一癖も二癖もある人物が少なくない。新党の立ち上げにかかわる人物も似たところがある。NHK党、れいわ新選組等々・・・。社会常識が今一つの議員も少なくない。自戒自浄が至難で、自然淘汰を待つしかない政党もある。
しかし、既成化した政党、お役人任せでは、「国民全員スッポンポン社会でも、悪いことしていないと怖がることはない」・・・のトーンが正論化してしまう。やはり、新たな単一論点政党(シングルイシュー政党)が必要だ。
市民も、マイナカード作って、ポイントで人参か何かが買えた・・・の感覚。まさか、健康保険証をマイナカードにし、全国民の医療/健康データを、マイナンバーでトータルにデジタル管理して、有事に備え自動徴兵システムをつくりにつながるなど・・・・・の考えには及ばない。
金融口座のマイナ管理などもほとんどの国民は望んでいないはずだ・・・・。こんな「金融プライバシーの公有化策には反対、マイナポイントは要らない。」が大勢だ。そこで、国の役人は、金融口座へのマイナ付番、金融プライバシー公有化に「Yes」といわない国民全員あてて「オプトアウト【反対/ノーと言わない限り、賛成/イエスと扱う】」旨のDMを出すという。また、血税の無駄遣いである。
ところが、国会では、まったく議論がない。平和ボケで、役人主導で危ない監視社会つくりが進んでいるなど思いもしない。国のトップの外遊時に子息の秘書が観光三昧であったとか、なかったとか? 週刊誌ネタが国会での野党の追及の矛先になってしまう。これも血税の無駄遣いだろうに!
今の政権では、異次元政策の洪水だ。「異次元の少子化対策で、児童手当の増額や出産後の女性の心身サポート強化など「産後ケア」の充実をぶち上げる。だが、全国の医療機関や薬局にMシステム(医療プライバシー/人格権を国有化、自動徴兵システムつくりにつながる危ない監視国家構想では、・・・・・「子どもなどつくらない方がいい!」となるのは当り前だ。
マイナカード/保険証が「自動徴兵レッドカード(赤紙)」に化けないように警鐘を鳴らし、運動を後継に託すこと「タスクシフト」も考えよう。
マイナ要らない運動が弱ると役人の思うツボだ。平和憲法、人権保護を基軸に据え、「ゼロマイナ」から「ウィズマイナ」のスタンスで、危ない国民総背番号(マイナ)の的確な利用制限を目指すサステナブル(持続可能)な運動を展開しよう!!
2023年1月
通常国会でのマイナ法改悪案は、与党ばかりか、維新のような野党まで賛成で、通過の勢いだ。マイナ要らない運動体も、国会内では各党への精力的な陳情を続けている。しかし、同時に、こうした従来の運動手法では、流れを変えられないこともはっきりしてきた。
市民からPIJへさまざまな声も寄せられている。
≪PIJへの1市民の声1≫
マイナ要らない運動は、頑張っていると思う。ただ、他人のふんどし(既成政党依存)で、ムシロ旗・竹やり、玉音放送の解説のネット拡散の手法では、行先不透明。運動のゾンビ化、絶滅危惧種を防ぐには、自分のふんどし(新党)で相撲とらないと、闘いにならないのではないか?
参政党、旧NHK党(勢いが別の方向へ加速し転落しそうだが。)・・・・自分のふんどし(新党)をしめて、政治の土俵で闘おうと試行錯誤している。マイナ要らない運動も新党が要るのはないか?今回の自治体選挙でも、無投票当選が増えている。チャレンジする好機ではないか?
≪PIJへの1市民からの声2≫
マイナ要らない運動、マイナ改悪案の国会闘争 呆れます。 自分らだけによる、囲い込み「反対オタク」罪悪ですね。 『俺たちはあらゆる手段で精いっぱいやったあ〜〜』 くそっ!!
上のような「声」は、真摯な検討に値するのではないか? 今のマイナ要らない運動は、「看取り」、独りぼっちの闘いに追い込まれているのは事実ではないか?
ある程度のレベルの市民層は、マイナ保険証の危うさを感じている。積極的に賛成している人は少ない、と思う。
だが、マイナ要らない運動は、こうした人たちの声をくみ取り、自らの言葉で政治の場で発言できていない。なんでこんなに劣化してしまったのだろうか?
ウクライナは、ゼレンスキーがいたから、専制主義のロシアと闘えている。 一方、マイナ要らない運動は、専制主義の政府/議会への陳情では健闘しているものの、まともに闘えてはいない。
住基ネット要らない運動のときは、右左を問わず、幅広い人たちが参加できる橋頭保(足場)が築けていた・・。こうした過去を振り返ってみても、マイナ要らない運動にとり「幅広い人たちが参加できる新党(足場/フォーラム)の構築は、サステナブルな闘いに必要不可欠」である。
「評論家みたいなこというな!」と批判されることを覚悟のうえのアイディアであるが・・・・・。
マイナ違憲裁判闘争も同じだ。最高裁が「合憲」と判断するのがわかっているのに最後まで突っ走る。反マイナでサステナブル(持続可能)な闘いを望む者には迷惑である。身勝手なカミカゼ戦法は時代に合わない。まさに、自分らだけによる、囲い込み「反対オタク」罪悪の1つかも知れない。「合憲」「違憲」をはっきりさせないで賢く闘う戦略を採って欲しかった。
学者出身の団藤元最高裁判事は、1981年の大阪空港訴訟で、行政追従の司法・汚れた最高司法の姿をノートに記して、世を去った。4月16日のツイートでふれたように、最高裁判決の結論が、法務省(行政)出身の元長官の介入で、国側勝訴に覆ったのである。【詳しくは、2023年4月15日:最高裁の「闇」を暴いたNHK・ETV「誰のための司法か〜団藤重光 最高裁・事件ノート」放映参照】
三権分立の原則は、「司法」も国家権力、ということだ。こうした認識なしに、青いまま食べると、食あたりする。ただ、憲法訴訟だと、その影響は、食べた人だけにはとどまらない。
マイナ要らない運動は、既成政党頼み、国会からの玉音放送の中継、解説オンリーから脱皮しないといけない。新たな足場(新党)つくりが要る。マイナパンデミックにストップをかけるため、強いリーダーシップが問われている。